複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照1500突破感謝!オリキャラ募集! ( No.194 )
日時: 2015/10/16 22:43
名前: ユッケ (ID: Pi8kpTE6)

■今回の一件の後日談■



凛人さんの手術が終わった。

凛人さんの傷はそこまで深くはないらしい。

しかし、まだ目を覚ましてはいない。

何か術にかけられたように起きないのだ。

「凛人は私が付いてるから大丈夫。三好君は皆と話をしてらっしゃい。色々と説明しなきゃいけない事もあるでしょ?」

僕は病室を後にし、皆が待つ待合室に戻った。







病院の中で話すわけにもいかないので、皆で外に出て病院にくっついている公園で話をする事にした。

夜も深くなってきた。

静寂が辺りを包み、月の明かりが怪しく僕らを照らしている。

僕が今回の一件を全て説明する。

「今回現れた王国という組織。そして、凛人さんに怪我を負わせたキリエ達。その抗争に僕達は巻き込まれてる」

「キリエは、その王国とかいう組織のリーダーに傷を負わせている。衝突は避けられんだろうな」

千香が僕の説明に補足してくれる。

「…………これから先、僕らは本当に危険な状況になる。王国はすぐにでも動き出そうとしてる。だから…………“僕ら”は“僕らであることをやめよう”と思う」

「え! それって……」

みよりが今にも泣き出してしまいそうな声で心配を口にする。

「うん、溜り場で集まるのも今日で最後。皆で街を歩いて散歩をするのも、変り種アイスを食べて品評会をするのも、勉強をしたり、ふざけあったり、笑いあったりするのも、今日でお終いにしよう」

これが僕の提案。

チームとして見られているのなら、個人になる事でそれを避ける。

一旦バラバラになって、ほとぼりが冷めた頃に、また皆で集まる。

それが僕が考えた解決策。皆が安全に生活出来る為の方法。

「どうしても、その方法じゃなきゃ駄目なのかよ!」

赤菜が僕に詰め寄る。

「それが1番安全なんだ。僕らをやめることでチームとして見られる事はなくなる。全てのほとぼりが冷めたら、また皆で集まろう」

「なんだよ……それ……! それじゃあまた———」

「祐は1人だよ」

音羽の声が低く響く。

「そう……だね。でも、少しの間だけだから」

「……私帰る。行こう、みよりちゃん。家まで送るよ」

「私も行くぜ。音羽とみよりだけじゃ危ねぇからな」

音羽と赤菜、みよりが去っていく。

喧嘩別れみたいになっちゃったけど、今はこれでいいんだ……。

「辛そうな顔ですね。あまり無理はなさらないように、では……」

クミはペコリと一礼して帰っていった。

「情報は入れてやる。だが、王国の動きには充分に注意しろ。…………飯が食えないのは残念だ」

千香は小春ちゃんと一緒に闇の中に消えて行く。

「三好さん……」

「鈴也君も元気でね。何かあったら連絡して。助けに行く」

「三好さんも、お気をつけて」

「私が御影を送って行くわ」

レイラが僕の肩に手を置く。

「うん、お願い」

「……今日は、助けてくれてありがと。また会えるのを楽しみにしてるわ。この街で……唯一の居場所……」

最後にレイラと鈴也君が去っていく。

月明かりの照らす夜の公園に、僕はたった一人で空を見上げながらただ立っている。

「あ……れ……?」

頬を濡らすものに気付いて、急いでそれを拭う。

「何で、泣いてるんだろう? 僕が決めた事だ。僕が泣いてどうするんだ……」

僕は、ずっとどんな顔をしていたのだろう。

クミが言っていた、辛そうな顔ですねと。

そう言えば声も上ずっていたかもしれない……。

どうしようもなく辛いし、泣きたい!

「だって……また……独りだ……!」