複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ ( No.22 )
日時: 2015/02/22 21:20
名前: ユッケ (ID: TzDM8OLf)

僕は超能力を使った。二度と使わないと思っていた禁忌の力を使った。

後悔は無い。音羽を守れた。それだけで充分だ。

もう彼女とは会えないだろうけど、僕はまた、超能力者の落ちこぼれになるよ……無能力者として、生きていくよ。

音羽の目が覚めたら、全部話そう。そして…それが最後だ……。









「……ん…」

私は夢を見ている…?

「気がついた?」

「……ここは? お兄ちゃん…は?」

「病院だよ。大丈夫、慎也さんは、僕がなんとかする」

あぁ、三好君なら安心だ…。

「僕はね、超能力者なんだ。“受けた能力を超能力として使うことが出来る”それが僕の能力。才能を喰う呪い」

三好君の超能力……凄い能力だね。

「最後に、僕の一番冴えたやり方で、きっと慎也さんを助けるから、だから……安心して寝てていいからね」

私は目を閉じる。ゆっくりと…。

「おやすみ……さようなら」

聞こえたその言葉にハッとして目を覚ました。

ここは…病院? もう、朝だ…三好君は!?

病室を見渡しても、彼は……どこにもいない……。









「さて、慎也さんが目を覚ますまでは待機だ。お別れも言ったし、これで…良かったんだよね」

過去の過ちを繰り返してはならない。

僕の能力は“受けた能力を超能力として使う”という恐ろしくチートじみた能力。

僕がいるだけでどんな能力も使い、どんな能力も超能力にしてしまう、そして能力者の意味を奪う。

能力はその人の才能を昇華させ、発現させたもの。

僕の能力は他人の才能を他人以上に使いこなしてしまう。

才能を喰う呪い…。

「このまま音羽と一緒にいたら、また失ってしまう。もうあんな思いは嫌だ。これが正解。僕は一人で、無能力者でなくちゃいけない」

病院を出て門の辺りまで来た所で、何やら悪寒を感じた。

「お前には借りができた」

スッと門の陰から現れたは漆黒の少女。

「バジリスク!」

「その名を知っていたか、まぁいい」

「一体何の用?」

「言ったろう、借りができた。奴が食っていた薬物、あれは“パワー”と呼ばれるものだ。取引の際には形状なんかを誤魔化す為、1本2本と数えられる。最近私のシマで馬鹿が売り捌いているらしくてな、慎也に目を付けたが、奴は実験材料にされた哀れなモルモットだったわけだ」

「実験…材料…」

「下っ端に振り回されたのが癪だが、お前達のお陰で手間が省けた。一応礼を言っておく」

「悪党の仁義か?」

「ハッハッハ! 確かに私は悪党だ。だが正義はある! 私のシマで私の正義に反した者は許さない。薬物なんて腐ったものを持ち込みやがったクソ野郎には、私が制裁を加える! お前達はもう手を引け、ここからは私の戦争だ」

そう言ってコートを翻し、彼女は闇へと消えていった。

まだ終わってない…この街に巣食う未知の薬物。その大元…。

慎也さんは、その一端に過ぎなかったのか…。