複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照3000突破感謝! ( No.220 )
日時: 2015/12/10 20:15
名前: ユッケ (ID: /fe4MZQT)

緋色 赤菜は違和感を感じた。

野外でダンスの練習をしていると、人の目は集まりやすい。これは幾度となく経験している。

ましてや今回は音楽も無い状態で体だけを動かしているのだから、余計に目立つのは仕方が無い。

しかし、違和感を感じた。

近付いてくる男に対して違和感を感じざるをえなかった。

そう、物珍しさから“見る”事はあるかもしれないが、“近付く”というのはやはり何かおかしい。

それも、何かを狙っているように見える。

緋色 赤菜はダンスをやめて男を横目で確認する。

(知り合い……じゃないし……でもなんかスゲー近付いてくるな……)

なおも近付いてくる男に警戒する。

「ねぇ、キミ……緋色 赤菜だよね?」

「え?」

男にいきなり名前を呼ばれて動揺した。

男はもう緋色 赤菜の真横にまで近付いていた。

「キミ……緋色 赤菜だよね?」

再度名を呼ばれる。

「あ、ああ、そうだよ。どこかで会ったっけ?」

「それだけ確認出来れば、もういいや」

「え? な!?」

突如として地面が沈むような感覚に襲われる。

いや、本当に自分が地面に吸い込まれていた。

もがこうとしても足が上がらない。底なし沼にはまってしまったかの様になすすべが無い。

「…………」

沈んでいく彼女を見下ろす生気の無い目が不気味に映る。

「この……ヤロォッ!」

能力である炎を掌に作り、地面に向かって叩きつける。

しかし手応えは無く、片腕が地面に吸い込まれてしまった。

咄嗟に腕を地面から出す。

足とは違って腕は引き抜くことが出来た。しかし、もう胸の辺りまで沈んでしまっている。

「無駄だよ。影に何をしようとも効かないんだからさ」

「クッソッ! 何の……目的で……」

「…………人質。リーダーは三好 祐が欲しいんだって、だからキミは人質」

「お前、王国! ガッ! ハッ!」

喋っているうちに口元まで沈み、溺れているようにもがく。

「大事な人質だから、沈んでも死にはしないよ。後の事は知らないけど」

(クソっ! ごめん……祐……また……)

「赤菜ぁあああああああああああああ!!!」

(祐の……声が……する……)

緋色 赤菜は手を伸ばす。

上へ、沈んでいく最後の瞬間まで、精一杯に手を伸ばす。








ズザザーーーッ!!

地面を砂埃が舞う。

緋色 赤菜は影に沈み、三好 祐の掌の中からは砂がサラサラと零れた。

間に合わなかった。沈んでいく緋色 赤菜の手を掴もうと飛び込んだが、掴んだのは冷たい砂粒だけだった。

「お前ッ! 赤菜を返せぇええええ!!」

「嫌だよ」

「ぐふっ!」

立ち上がり、男に殴りかかる三好 祐。

しかし、カウンターで腹に足刀蹴りを喰らい地面に転がる。

「クソッ! 見ろ!!」

七咲 千香がライターに火を着ける。

「見るわけないじゃん」

男は後ろを向き、もう用は無いとでも言うように走り始め、この場を去ろうとする。

「相手はあなたの能力を知っているようです」

「そんな事は今ので解った! 追うぞ!」

「ゲホっ! 逃がすかっ!」

「大丈夫でありますか? 先輩」

「ちょ! アレ見るッス! なんか出て来るッスよー!」

逃げる男の影から飛び出すように出てきたのは、人間だった。

しかし緋色 赤菜ではなく別の人間。

「そうか、やっぱりアイツあの夜に出逢った王国の人間だ。影の中に人を入れたり、影の中を移動する能力だ」

「出て来た奴は足止めか、小春! 奴は無視だ。逃げる影野郎を追うぞ!」

「はいッス!」

「兎はヤンキーについて行ってください! 相手が影なら電気は有効です!」

「う、うっす! 了解致しました! クミ先輩!」

「通す訳にはいかないな!」

足止めの為に出て来た男が立ち塞がる。

しかし、男を何か白い物が掴んで拘束した。

その間に七咲 千香、双葉 小春、宮本 みよりが男の横を通り抜け、影の男を追う。

「悪ぃがお前の相手は私達だ!」

男を掴んだのは骨! 骸骨の手!

「ミクナイス!」

「へへっ、三好ぃ! 共同戦線だ!」