複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照3000突破感謝! ( No.224 )
日時: 2016/01/05 20:37
名前: ユッケ (ID: Z9bE6Hnf)

「敵、裏路地に入ったであります!」

「ああ、計算通りだ! この先は3階立ての廃オフィスがある。当然行き止まりだ。そこで奴を仕留める!」

3人は影の男を追って裏路地に入る。暫く狭い道を走ると、少し開けた場所に、不気味に佇む建造物が見えた。

周りは建物の壁で、後ろ側も壁だ。都市開発の中で閉鎖され、その空間に忘れられたコンクリートの塊。

「建物内に男の姿は見えないッス」

「屋内だからな。影がある。兎は電気で影を照らして消しながら進め。奴の攻略の鍵はキサマだ」

「うい! バチバチ照らして炙り出しますよーぅ!」

感情増幅の効果が続いているみよりは電気を体に纏いながら、発光体のような感じで先行してビルの中に入る。

埃の被ったボロボロのデスクが1つあるぐらいで、他に置いてある物は何も無い。剥き出しのコンクリート壁がやけに空気を冷たくしている。

ビル内部が照らし出され足元が明るくなるが、特に変わった様子はない。

「上の階でしょうか?」

「かもしれんな、慎重に進むぞ」

みよりを先頭に階段を上がっていく。

二階も何も無い空間で、窓からは別の建物の壁が見えている。

「今は追い詰めているが見逃せばまた逃げられる。見逃さないように気をつけろ」

「う〜ん、全然見当たりませんね〜」

「私はこっちを捜すッス」

小春が部屋の隅の床を調べ始める。

壁沿いに歩きながら薄く照らされた床を調べる。

「……いない……か、だとしたら3階だ。フロアは3階までしかない。いよいよ追い詰めたぞ」

「では、3階へ行きましょう! 小春ちゃん———」

「はいッス! っ!? んーーーー!?」

突然、小春の後ろその壁の中から男の腕が飛び出し、小春の口を塞ぎ体を拘束した。

「小春! クソッ! 兎!」

「だ、駄目です! 小春ちゃんまで巻き込んじゃいます!」

影の男が小春と密着しているせいで、電撃を当てる事が出来ない。

影の男はそのまま小春と共に壁の影の中へと消えて行く。

小春との距離が離れすぎていた。2人とも走ったとしても間に合わない。

「小春ーーーー!!」

「んんーーーー!!」

影の男と小春が影の中に消え、再び静寂が訪れる。

ほんの数秒の出来事。小春は影の中に捕らわれてしまった。