複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照3000突破感謝! ( No.226 )
- 日時: 2016/01/18 18:52
- 名前: ユッケ (ID: .cKA7lxF)
コンクリート作りの廃ビルの3階。
天井は老朽化により剥がれ、破片が地面に散らばっている。
階段をコツコツと鳴らし、千香が3階に現れる。
階段の下ではみよりが電気を放ち、2階の空間を真っ白に照らしている。
(上がってきたのはバジリスクだけか……あの電気娘がいる限り2階には行けないな)
影の男、須崎 灯護(スサキ トウゴ)は自身の能力で影の中に潜りながら千香の様子を窺っている。
赤菜や小春を閉じ込めている影の中と、自身が潜っている影の中はどうやら別らしい。同じ自分の影なのだが、例えばタンスのように、いくつか引き出しがあるようだ。
一方の千香は、手に持っているライターで薄く照らしながらゆっくりと歩いている。
「クソっ、やはりこんな火では気休め程度にもならんか……」
(問題はどういう思惑なのかという事か……電気娘は生命線、2階に置いておくのは妥当……2階には行けないから3階で決着を着けないと駄目……はぁ、めんどくさい)
「ビビッて出てこれないのか? 私の能力が怖いのか?」
(そんな訳ないじゃん。おそらく、僕が影の中に奴を取り込もうとしたところを、階段下で待機している電気娘が攻撃、その後フルボッコって作戦なんだろうけどね。
でもま、壁を背にすればさっきみたいに攻撃できずに終了。あんな娘にバジリスクごと僕を攻撃するなんて真似出来るわけないし)
「おい! さっさと出て来い! 小春も赤毛も返してもらうぞ!」
(そうだ、あと少し……壁側に寄るんだ……)
千香はライターで照らしながら3階の空間を歩く。そして徐々に近付いていた壁に手をつき、壁という空間の区切りを認識しながら暗い中を警戒して進む。
(さて、距離・場所共に充分! さっさと終わらせて寝よ)
ライターの僅かな光に気をつけながら影の中を移動し、壁の影へ。
体を影から出し、腕を伸ばして千香を羽交い絞めにし一気に影の中へと引きずり込む!
「なっ!」
「残念でした〜キミ達の負け〜」
「ふっ……兎!!」
「行きますよーう!」
今の声が合図だったのか、みよりが階段下から現れる。これは思ったよりも早い登場だ。
それもその筈、階段下というよりは階段の途中にみよりは待機していた。
そして、少しの電気を放ち、まるで2階全体を照らしている光が3階まで漏れているように演出していたのだ。
しかし、登場時間は関係ない。
「駄目ダメ〜攻撃すればこいつもただじゃ済まないよ」
「なら! あなたには攻撃しないでありますっ!」
みよりが放った電気は、千香でも灯護でも床でも壁でもなく、天井へ、その真下には灯護と千香。
「ハハハっ! どこ狙ってるのさ!」
「狙い通りだバカタレ!!」
千香が拘束されたまま足を振り上げ、そのまま一気に振り下ろし、踵で灯護のスネを蹴る。
「ぁだっ!!」
その瞬間、ダメージを与えた事で集中力が切れた影の能力から灯護を引きずり出す。
羽交い絞めにされていた腕をそのまま脇に挟み、前に歩くだけで簡単に成功した。
「クッソ! あがッ!?」
「威力は弱いが、これくらいは携帯しているさ」
千香が灯護に当てているのはスタンガン。
そして、灯護の体が不思議と宙に浮かんで行く。
「何だよコレ!」
「ここの天井が剥がれている事は知っていた。兎に天井を攻撃させたのはそこに狙いがある」
「剥がれている事で剥き出しになった鉄骨と、あなたに電気を通せば、生まれた磁力によってあなたは宙に浮かぶ! それに私、超能力者ですから、磁力の強弱も微調整出来るでありますよぅ」
「つまりだ、お前を空中で止めちまう事も出来るってわけだ。これで影には潜れないだろう? 私達の勝ちだ。さぁ、小春と赤毛を返せ!」
「キミ達は影に潜れない……僕が開放しない限り彼女達は救えないよ!!」
「おい……」
場の空気が凍りつく。千香が放った低い声が灯護を骨から冷たくさせる。
「私を怒らせるなよ……」
灯護は目が離せなくなる。千香の冷たい瞳と、ライターから出る怪しく揺れる火を見る。
「ぁ……ぁぁ……ぅわああああああああああああ!!」
影が軟らかくなったかのように蠢く。千香はその中に迷いなく腕と顔を突っ込む!
「小春ーーー!!」
「あ! 姉御!!」
「赤毛もいるか?」
「いるぜー!」
「よし! 小春、この手を掴め! 赤毛も小春の手を掴め! ここから引っ張りあげる!!」
小春が千香の手を掴み、赤菜が小春の手を掴む。
千香が影の中から2人を引っ張り上げる。
「やっぱり姉御は頼りになるッス」
「全くだぜ本当に……すっかり助けられちまったな。ありがとな。小春、千香、みより」
「すぐに戻るぞ、三好と一乗寺が闘っている」
「この人はどうするでありますか?」
「放っておけ、今はあっちが優先だ」