複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照3000突破感謝! ( No.236 )
- 日時: 2016/02/11 19:27
- 名前: ユッケ (ID: oXddV8rJ)
「しかし、どうしてキリエなる人について調べているでありますか?」
「キリエには殺人や公務執行妨害などの容疑が掛かっています。しかし、彼は能力学区の裏に潜む危険人物です。私達警察が手を焼くほど情報が入ってきません。全くの謎なのです」
「そこで、私達に白羽の矢が立ったわけね」
「お察しの通りです。では、皆さんに質問させて頂きますね。もちろん正直に答えてください。皆さんの中にキリエと直接会った人はいますか?」
その質問に僕、千香、小春ちゃん、赤菜、みよりが手を上げる。
「つっても、私とみよりは話もしてねーけどな」
「ういっす! まさかアレが鷹東 キリエとは思いませんでした」
1人でデビルアクトと戦いに行った千香を捜している時、案内したのがキリエだ。
「話をした事があるのは、僕と千香と小春ちゃんだね」
「では、その3人に質問です。キリエはどのような人物ですか? 外見とかそういう事ではなく、キリエに出会い会話をしてどのように感じたかです」
「う〜ん、どのような人物……か……なんだか全部見透かしてるって感じの人でした」
「…………」
「姉御?」
「七咲さんはどうですか? バジリスクとしての意見でも構いません」
「フン……奴は外道だ。何か最悪な事が起きたとしよう、それはキリエのせいだ。今日はツイてないと思った奴を更に突き落とすのが奴だ」
「なるほど、では双葉さんは?」
「苦手な奴ッスかね〜。それに私なんかは多分眼中にも入ってないッス」
「わかりました。では次に、キリエの能力についてです。彼が何かしらの能力者であることは間違いありませんが、詳しくは解っていません。彼の能力を目の当たりにした事のある人はいますか?」
千香がフンと鼻を鳴らす。
「見た事があるんですね? いったいどのような能力ですか?」
「そんなものはこっちが聞きたい。奴の能力は謎だ。見当も予想もつかん」
「そうですか……あー、凛人さんに聞くことが出来ればなぁ〜。…………ああっ! そうです!! キリエが“姫”と呼ぶ少女! 彼女について何かご存知無いですか?」
姫というワードに、僕達は首を傾げる。
そのような人物には全く心当たりが無い。僕がキリエに会った時も、少女なんて居なかった。
「すみません、僕達はそれ初耳です」
「七咲さんはどうですか? 何か……」
「あの夜出会ったのが初めてだ。まさかキリエが年端もいかん娘に飼われていたとは、笑える話だ」
「そうですか……そうですよね……うーん、凛人さんをやったのって、その姫って少女らしいんですよね」
「ええ!?」
当事者である千香以外、皆が一斉に驚く。てっきりキリエにやられたのだと思っていた。
「凛人さんがやられた状況を三代さんに聞いたんです。姫と呼ばれる彼女の能力が何の能力かは解らないですけど、おそらく超能力者で、凛人さんの能力を上回る程強力な能力です。
ですから皆さん、これからもう絶対にキリエには関わらないようにしてください。キリエの後ろにいる少女、彼女の出現で私達警察も更に手が出しづらくなってしまっています」
本職のしかも能力犯罪に特化した警察官がキリエ1人に手を焼いているというのに、その更に奥にもっと深い闇の存在がある。
そんな事知らなかったでは済まされない。
だって僕らは、キリエと王国の抗争に巻き込まれてしまっている。僕達は抜け出せない闇の中に、どっぷりと沈むほどに浸かってしまっているのか……。
「それと、もう1つ忠告しておく事があります。ここ1ヶ月間なんですけど、同一犯によるものと思われる殺人事件が多発しています。犯人の容姿等は一切解っておらず、防犯カメラの映像に犯人は映っていないのに、人が刃物で刺されて絶命しています」
「カメラに映っていないのに人が勝手に死ぬっていうの? 自殺じゃないの?」
「亡くなった方は皆背中から刺されています。明らかに他殺です。それと気になるのが、亡くなった方はいずれも、いわゆる悪党という人達です。
闇金業者、人身売買を生業にしている人、汚い方法でお金をせしめている議員、その他警察がマークしているような人物…………そんな方達ばかりを狙っています。
そこで、先程の姫が怪しいのではないかと思っているのです」
「確かに、とんでもない能力の持ち主だとすれば可能性はありますけど、動機が見えてきませんね。世直しって言うと聞こえだけはいいですが」
「キリエの飼い主が怪しいのだろう? なら、単に気に入らん奴を殺しているだけだろう」
「なるほど……殺害された人物とキリエの関係の有無も調べた方が良さそうですね。これは本部に報告して…………よし! 皆さん、今日はありがとうございました。必ず捜査に役立てますので」
「いえ、私の方こそです。泉川さん、助けてくれてありがとうございました」
「王国という組織についても、こっちで調べてみます。それでは皆さん、お気をつけて」
そう言うと泉川さんは敬礼して去って行った。
その後、僕らはというと……久し振りに溜り場に行き、今後の事を話し合ったのである。
僕達はチームだ。王国もキリエも全部皆で乗り越えるんだ。