複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照4000突破感謝! ( No.243 )
日時: 2016/03/02 02:02
名前: ユッケ (ID: 3ib433J1)

ナギサさんがキリエの差し金? って事は仲間? 驚きを隠せない僕をよそに、ナギサさんは立ち上がる。

「お前は何も解っていないんだな。キリエという人物の事も、この街の闇の事も。悪ぶったガキが遊び半分で踏み込んでいい場所じゃないぞ」

「んなこと知るかよ。とりあえず動けなくすりゃいいか」

九十九 神矢が空間を捻じ曲げ、ナギサさんを包囲する。これは僕も一度喰らった事がある。あの時はミクから借りた特殊骨格で鎧を作って身を守った。

あれは檻だ。しかも押し潰すように内側に向かって迫ってくる檻。

「ナギサさん!!」

「良い具合に潰れとけ」

「っ———」

ナギサさんが透明になって姿を消す。そうか、九十九 神矢の空間歪曲は能力を通す性質を持っている。全身が能力化するなら避けられる。

「……手応えがねぇ。空間に入り込んだのか? いや……チィッ! 後ろか!」

九十九 神矢が咄嗟に振り返り後ろへ跳ぶ。

「ほぅ、よく避けたな。空間の違和感は確かに感じるらしい」

「てめぇ、今のどう避けやがった!」

九十九 神矢がもう一度ナギサさんがいるであろう方向に向かって空間を引き裂いて攻撃する。

すると、攻撃が後ろへ過ぎ去ってから、ナイフを持ったナギサさんがその場に姿を現した。

「攻撃自体のすり抜けか……だがおかしいな、ここでの最初の一撃はしっかりと喰らっているはずだ」

「ふ、どうだか」

ナギサさんの能力は明らかに透明化。例えば僕やナイフ、自身意外も透明に出来るようだ。そして驚くべきは透明という概念そのもの。

透明とは存在しないに同義。ゆえに、いかなる物もすり抜ける。

存在の透明化。その概念。

しかし、九十九 神矢の言った通り、ナギサさんは攻撃を喰らっている。回数制限か、条件か、あるいは準備が必要なのか……完全無敵の回避能力では無いという事だ。

昨日の夜も、僕が不意にこけたから透明化していても、すり抜ける方が間に合わなかったのかもしれない。

「てめぇよぉ、俺の攻撃が避け続けられるとでも思ってんのか?」

「そっちこそ、私を捉え続けられるとでも?」

今にも始まりそうな血の大戦争。

張り詰めた空気が嫌に重い。

僕はどうすればいい? ナギサさんはキリエの仲間で、九十九 神矢は王国の仲間。どっちに付くとかそういうんじゃなくて、どうしたらいいのか解らない状態だ。

(どうしよう……これ……)

パニックの一歩手前、そんな時だった。

「学校サボって夜な夜な女の子とマジ喧嘩とは、ダッサイのよアンタ」

月夜にサラリと靡き光るプラチナブロンド。これはまさしく!

「レイラ!」

「やっと見つけたわよ。ね、皆」

暗いから解らなかったけど、雲から月が出てくれたおかげで見えた。

音羽も、赤菜も、みよりも、クミも、鈴也君も、千香も、小春ちゃんもいる。

「チッ! 邪魔が入ったか。流石にこの数は無理だな」

九十九 神矢はそう言うと空間の中に消えて行った。

「で、三好。そこの女の子が静原 ナギサなのね?」

「うん、彼女がそう。ナギサさん、彼女達は僕の仲間なんだ」

「そうか、キミの仲間か。敵の増援だったらどうしようかと思った」

「静原 ナギサ。その黒髪と金色の瞳から“黒猫”と呼ばれているらしいな」

千香がナギサさんの前まで来て言う。

「らしいね。そう言うアンタはバジリスクでしょ?」

「ああ、その通りだ。お前を捜して歩き回ったが、ついぞ仲間の1人も出てこなかった。何があった? 教えろ」

そう言えば千香がずっと言っていたな。仲間1人たりとも出て来ないのはおかしいって……。

「……仲間はキリエに殺された。今の私はキリエの駒だ」