複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照4000突破感謝! ( No.247 )
- 日時: 2016/03/17 21:04
- 名前: ユッケ (ID: 3ib433J1)
「……お前、異常者だぞ」
料理の準備をする僕をジト目で見つめるナギサさん。言っている事の意味は解る。自分を監視しているかもしれない透明人間を家に上げて料理まで振舞おうとしているのだ。普通異常者だと思うよね。
「どうして私を部屋へ入れた?」
「話があるんでしょ? 喧嘩しに来たって訳でもなさそうだし。だったらいいかなって」
「……そうか、まぁそうだ。話がしたかっただけだ」
「じゃあその話って言うのは食事の後にでもゆっくり」
「わかった……」
ナギサさんはその後は何も言わずにただ座っていた。
しばらくして、部屋にはフリットを揚げる音とおいしそうなイタリアン料理の匂いが漂っている。
今日のメニューは、鱈のフリット、紫玉葱とトマトのマリネ、チキンドリアの3品。
フリットは揚げる前の鱈に香草を塗していて香りが良く、マリネは紫玉葱がキレイで見た目も楽しい、チキンドリアは香ばしいチーズが食欲をそそる。
いつもは1人だが、今日は2人で食卓につく。
ナギサさんは黙って食べていたが、僕よりも完食が早かった。こういう反応をしてくれると作った甲斐があって嬉しい。
「……バジリスクの言った通りだな」
「……え?」
ナギサさんが何を呟いたのかを聞き逃してしまった。
「なんでもない。それよりお前に話があるんだ私は」
「そうだったね。で、何?」
「私は、お前達の側につきたい。仲間に入れて欲しい。話というのはその事だ」
「キリエを裏切るっていうのかい? それはサギサさんにとって危険な事なんじゃないの?」
「私もそう思う。だが、バジリスクは大丈夫だと言った」
「え? ちょっと待って、千香がそんな事を?」
「ああ、今は大丈夫だと。キリエが私を殺しに来る事は絶対にない。今の奴はそれどころじゃない……と。それに、バジリスクは自分よりお前を信じろと言っていた」
「僕を? 何でまた僕なんかを?」
まぁ、信頼されるというのは悪い気はしないし、良い事なんだけど……千香はキリエについて何か隠している気がする……しかし、彼女が話す必要が無いと考えたのならそういう事なのだろう。彼女は僕達より闇に精通している。彼女を信頼しよう、彼女が僕を信頼してくれたように。
「僕達の仲間になりたいっていうのは、また何でなの? 僕もナギサさんを信頼したいんだけど、今は王国とかキリエとか何かとピリピリしてるから」
「信頼に足る理由や説明が欲しい……という事か」
「うん。そういう事」
「解った。……変な事を言うが、この世界は呪われている」
「呪い……イスの取り合い、ババの押し付け合い、自分の幸福は他人を不幸にする。この世界の構図」
「私はキリエに恐怖し命を乞うた。そして殺人鬼へと成り果てた。私が生きる代わりに沢山の人を不幸にした」
「でも、ナギサさんが殺したのは他人を食い物にしていた呪いそのものだよ」
冷たい言い方だし、非人道的な発言。僕はワザとこう言ったのだ。殺人はどうあっても殺人だ。許される事じゃない。もし殺人を肯定するようなら、彼女を信頼する事は出来ない。
「…………たとえ人間の屑だったとしても、私は自分が生きたいから人を殺した。今の私が呪いそのものだ。私はそんな自分が嫌だ。殺人なんて本当はしたくない! なぁ、頼むよ……私を呪いから救い出して欲しい! 三好 祐! 私を……助けて……」
彼女は確かに人を殺した。それは償って然るべき罪。だけど、彼女もキリエに人生を狂わされた被害者だ。だから今は、今だけは見逃して欲しい……。
「ナギサさん。僕はキミを助けたい。キリエを倒そう」
「三好……いいのか……」
「うん。でも、条件付き。全部が終ったら必ず罪を償う事、それと……」
「それと?」
「王国についての情報が欲しいんだ。協力してくれるよね?」
「……ふ、私は透明人間、しかも超能力者だぞ。任せろ」