複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照4000突破感謝! ( No.248 )
日時: 2016/03/20 23:53
名前: ユッケ (ID: 3ib433J1)

■厚貌深情■



ここはとある廃墟。昔は何かしらの研究をしていたらしいが、それに関する資料はこの廃墟内には残っていなかった。

住所検索でこの建物が一体何だったのかを調べたが、情報は全く出て来なかった。

怪しげな機材とスクラップだけが残されたこの広い建物を、現人神 剣は王国のアジトにした。

剣は薄汚れた柱に手を当てながら思う……ここはかつて能力開発の研究施設だったのではないかと……そこをアジトに能力者優位の世界を目指す。それは少し出来すぎか……。

「考え事かいな、剣」

「準か、そういう風に見えるかい?」

糸目に金髪のエセ関西弁の男。羽織部 準(ハオリベ ジュン)は王国のメンバーだ。現人神 剣を外ではリーダーと呼んでいるが、サシの時は名前で呼ぶ。それが出来る程、信頼されている間柄だ。他にそれが許されているのは霊能者土御門 錦と、影の能力者須崎 灯護。空間超能力者の九十九 神矢。もう1人、女性で唯一その位置にいる榎原 七海(エノハラ ナナミ)である。

「剣は優しい顔して何考えとるんか解らん人間やからな。あんまし自分の事言わへんし」

「気恥ずかしいだけだよ。僕なんて人間は大した人間じゃない」

「それにしては大層な苗字やで、現人神。名は体を成すとも言うし、実はおっそろしい神さんやったりしてな」

「ハハハからかうなよ。でも、この能力は恐ろしい能力だよ」

「違いない、怪我とかした事ないんちゃう?」

「あるよ、痛いと思ってもすぐに治してしまえるんだけどね。でも、治らないものもあるんだね……」

「剣に治せん怪我ってそれどんな怪我やねん。……まぁええわ、キリエは一向に捕まらへん。三好 祐は仲間が多くて単騎で挑むのは無理。しかも既に懐柔には失敗しとる」

「数で攻めても駄目だろうね。三好 祐の仲間には超能力者が多すぎる上にバジリスクがいる。それに、どうもキリエと接触している節がある。彼はおそらく奴のお気に入りだ」

「あちゃ〜完全に出遅れとるな。三好 祐をキリエ側に引き込まれたらもうアウトや」

「じゃあ、もう引き込むのはヤメよう」

「どういう事や?」

「3つの勢力が均衡状態にあるなら、どれか1つに退場してもらうんだよ。三好 祐がキリエ側につく事は阻止しなければならない。なら、三好 祐には消えてもらおう」

「せやから三好 祐には手出しができへんねんって」

「圧倒的な力なら問題は無いだろう? アジトの情報を流そう、彼らをここに招待し、潰す。フフ、僕が出る」

「剣が出るんかいな……本気で暴れたら建物無くなるで!」

「構わないだろ。所詮潰れた陰気な研究施設だ。王宮には相応しくない」

「わかった。情報は流しとく。でも剣……」

「任せたよ」

(お前、何焦っとるんや……昔から剣は何でも正しかった。でもホンマ、剣は何考えとるんかよう解らんわ。能力者優位の世界。信じてええんやな? 剣……)