複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照4000突破感謝! ( No.250 )
- 日時: 2016/03/23 03:13
- 名前: ユッケ (ID: 3ib433J1)
「え〜お金取るの?」
「そりゃそうさ、これは正式な仕事だよ」
「私が払ってあげるわ。でも、それは役に立つ話だった場合よ。先払いは絶対にしないわ」
「ふぅん、まぁいいだろう。で、占って欲しい事はなんだい?」
レイラには感謝しなくてはならない。なんせこの占いの相場が解らないから安くしておくと言われても不信感を抱かざるを得ない。それをレイラが有無を言わさぬ交渉で後払いに持っていった。
とりあえずタマモさんに霊能力者の事を話す。はてさてどんな占い結果が返ってくるのか……。
「というわけなんです。霊能について何か対策というか弱点みたいなものってありますか?」
「ハッハッハッハッハ! クスクス……いやぁ大した質問じゃないだろうと思っていたけど、ここまでとはね。こりゃ格安だね〜全くショボイ仕事を引き受けたものだよ」
「って事は笑い飛ばすぐらいには簡単って事だよな? ご高説願おうぜ」
「そう、簡単な話さ。霊能はつまりは概念だ。未知なる力を既知にする概念。霊的存在は私達にとっては未知で存在も疑わしいが、彼らにとって霊的存在は存在するもので既知なのさ。霊的存在を認め、その上でそれを存在足らしめる術を持っているってだけ、こんな言葉を知ってるかい? “血が出るなら殺せる”つまりはそういう事さ。彼らは霊的存在から血を流させる事が出来る」
「う〜ん、よく解らないでありますよ〜」
「私もチンプンカンプン。祐は?」
「あんまし解ってないかも……」
「そうさね〜、見方を変えようか、霊能力がなぜ霊でないキミ達に効いているんだろうね? これっておかしいと思わないかい?」
「言われてみれば……た、確かにそうですね。では、土御門 錦の能力は霊能ではなく、霊能と思わせる何かしらのトリックがあると?」
「違う違う、彼の霊能は本物だろうさ。問題は霊でないキミ達を霊と認識させる何かがあるって事だ。つまり、キミ達が霊でない事を証明すればいい。ヘンペルのカラスや悪魔の証明はご存知かい? 全てのカラスは黒であるなら、黒くなければカラスではない。悪魔が存在する事を証明するなら悪魔が存在する証拠を1つ出せばいい」
「女狐占い師が言うにはつまり、私達が霊でない事を1つだけ証明できれば良いと」
「そうそう、白いカラスを見せつけちまえばいいのさ。アルビノなんて世界中捜せばどっかにはいるだろう」
「でも、霊で無い事の証明ってどうやってすれば……もちろん僕達は生者だけど」
「そこで概念の話だよ。私達にとっての未知それを殺す力。だったら殺せない事を証明しちまえば良いのさ。霊能を霊能たらしめている概念そのものを否定する事で効力はグッと落ちるはずだよ」
簡単に纏めると、霊的能力は概念という柱があり、それを1本でも折れば崩壊する。というわけだ。柱を折るには証明が必要だが、1番簡単な方法は霊的能力が効かない事を証明すれば良いと……。
「待ちなさいよ。霊的能力が効かないようにしたいのに、霊的能力が効かない事を証明するって、それ無理じゃない」
「概念の破壊なんてそんなもんさ。証明出来た時点で勝ちなんだ。猟奇連続殺人犯に殺されない為にはどうすればいい? 答えは逮捕するだ。殺されないように逮捕する。霊能が効かないように対処する。それが解決法だよ」
「その対処の部分が聞きたいでありますよ」
「私が言っているのはほんの一例さ、あくまで私はヒント係、村人Aだ。答えまでは知ったこっちゃないね。キミ達を霊と認識している何か、そこが鍵だと私は思うがね。さて、これで私の仕事は終了さ。今後ともご贔屓に〜ってね」
タマモさんがレイラからいくら取って行ったのかは想像に任せるとして、僕達はこれだけヒントを聞いてもすぐに答えが出そうにはなかった。
結局それぞれが頭を悩ませるだけで、解決はしない。
僕達を霊として認識させている何か、霊でない事の証明、生者の証明。いったいどうすればいいというんだろうか……。
1つハッキリした事といえば、やっぱりタマモさんは胡散臭いって事だけだ。