複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照4000突破感謝! ( No.251 )
- 日時: 2016/03/29 03:18
- 名前: ユッケ (ID: 2bMKvkP1)
僕らは仕方なく溜り場に戻る事にした。
結局徒労だった気もするが、霊能について少しは理解できたのかも?
煤けたビルの階段を上り、錆びた鉄の扉を開ける。
「どこに行ったのかと思っていたぞ。三好 祐」
溜り場にいたのはナギサさん。ここにいるって事はもしかして!
「王国の情報、何か解ったの?」
「ああ、アジトが見つかった。北能力学区にある廃墟だ」
「マジかよ! じゃあ殴り込みだな!」
やる気満々の赤菜には悪いが、話し合いで解決できないものかと、僕は未だに思ってしまっている。
甘いのは解っているし、何度煮え湯を飲まされれば気が済むのかとも思っている。でもあと1度、1度だけ話をしてみよう。それで駄目ならその時は……。
「ありがとうナギサさん。でも……私はまだあなたの事……」
音羽が気まずそうに口を開く。
「許せない……でしょ? あなたは正しい。生きたいのも、殺人を犯したのも、全部私の我が儘だ。だから、あなただけでも私を許さないでほしい」
誓うように、約束するように、音羽が頷く。決して簡単な問題ではない。……法律は彼女を許さないかもしれないけど、どうして彼女が法を犯さなければならなかったのかを、僕達は知っている。だから、せめて知っていてあげる事だ。彼女の苦しみと恐怖を……。
「さて、カルマタイムはこの辺にしておいて、消えるちゃんの情報から王国のアジトは解りました。次に殴り込みの日時を決めましょう。この期に及んで1人で行くつもりは無いですよね? 僕っ子さん」
釘を刺されました。まぁ、この件に関しては僕は前科持ちなので仕方ない。
「大丈夫、ちゃんと皆で行こう。でも、行きたくない人はちゃんと言ってほしい。誰も責めないし誰も怒らない。王国と喧嘩しに行くことは強制できるものじゃない。本当に危険なんだ。守れるかどうかも、僕自身が無事でいられるかどうかも解らない。だから———」
僕の手を握ったのはみよりだった。
小さくて少し震えているその手は温かかった。
「先輩、宮本は怖がりで落ちこぼれな兎でありますが、先輩について行きますですよ!」
「みより……ありがとう」
その手に皆の手が重なっていく……僕はもう独りじゃない……。
「静原、お前も来い」
千香がナギサさんを誘う。しかしナギサさんは首を横に振った。
「血で汚れた私の手をキミ達に重ねる事は出来ない。でも、私も一緒に行動する。王国とやらを倒すのだろう? 私の超能力、少しは役に立つかもしれん」
「ありがとうナギサさん。僕達と一緒に戦おう」
僕達にナギサさんが加わって、また頼もしくなったこのパーティー。
なにもかもやっつけられそうな気がする。王国だろうが、呪いだろうが、なんだっていい。僕達がみんなやっつける!
その後話し合いで、決行の日にちは今週の土曜日の午後からとなった。
おそらく衝突は避けられないだろう。それに僕はずっと違和感を覚えていた。現人神 剣……彼に対する違和感。この違和感がいったい何なのか、それも確かめなければ……。