複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照4000突破感謝! ( No.260 )
日時: 2016/04/29 20:31
名前: ユッケ (ID: bKy24fC9)

「ナギサさん、私も連れて行って」

音羽がナギサに詰め寄る。

「構わないが私の能力で透明に出来るのは2つまでだ。誰かが派手なアクションを起こして時間を稼いでくれれば良いのだが……」

「ふむ、それはクミさん……いえ、ミクにお任せです。3人は僕っ子を追ってください」

「クミちゃん、ミクちゃん、ありがとう。気をつけてね」

「オウ! お前らも気をつけろ? まだ出て来てない奴もいるからな!」

そう言ってミクが混戦状態の中に戻っていき、巨大な髑髏の腕をブンブン振り回し始める。








「一乗寺! アンタは糸目の相手をお願い! 私はこのバカをやる!」

「了解だ銀髪! 他は?」

「私とみよりで影の男を相手してるぜ!」

「千香先輩と小春ちゃんはみより達を援護してくれているであります!」

「……こっちかなり厳しい。準、七海は?」

「ほらそこ、そこで震えとるわ」

彼が指差す方向には部屋の隅でプルプルと震えている少女の姿があった。

「う、うるさい! 流れ的に私がバジリスクを抑えなきゃいけないんでしょ? 絶対無理! 死んでも無理! てか死ぬ!」

榎原 七海(エノハラ ナナミ)。彼女は王国幹部の1人……なのだが、部屋の隅で震えている。

「チィッ! やる気が無いなら失せろ! 目障りだ!」

「わーーー! いくら敵でも言っていい事と悪い事があるわよ!」

「オイ! なんなんだアイツは!」

「私にもさっぱりッス」

「ああいう子なんや、堪忍したってや〜。おっと! 危なっ!」

羽織部 準の頭を髑髏がかすって行く。

「とりあえずお前を倒さないと三好を追えねェ! 早めに勝負つけさしてもらうぜ!」

「おっとろしい能力やな〜、錦置いとけば良かったわ」

「あの陰陽師か! 悪いがアイツだけはもう勘弁だ!」

(だが、ここにいないって事はやっぱりあの壁の向こうに保険としているみたいだな……マジで気をつけろよ……音羽、鈴也、ナギサ)









「壁は抜ける事が出来ましたね」

「そうだね。でも何だか簡単過ぎた気がする」

「おそらくまだ何かあるのだろう。私達がここに来る事も分かっていたようだったし、気は抜けん」

壁を抜けた3人は更に奥へと進んでいく。広く暗い廊下には3人の足音だけが響いている。

進んでいくと廊下の真ん中に彼が立っていた。

「悪いが、この先には行かせられないな」

土御門 錦。王国幹部であり、霊能の持ち主。

「やはり、簡単には行かないですね」

「仕方ないさ、2人は先に行くがいい。私が彼を抑える」

「ナギサさん……」

「待ってください、僕も残ります。彼は普通の能力者じゃないですから、フォローし合える方が良いでしょう」

「いいのか?」

「いいんです。千年先輩、行ってください!」

「鈴也君……ありがとう! ナギサさんもありがとう!」

「残念だが、3人とも誰も通さない。幽触(ゴーストタッチ)!!」

うねり、暴れる青白い無数の手が3人を襲う。

「か、数が多い!」

「お前だけでもここを通す! 行くぞ!」

「ナ、ナギサさん!? キャッ!」

ナギサが音羽の手を握り、彼女と共に透明になり走る。もちろん足音や声も透明能力で消す。透明能力を受けている本人同士は音や姿を認識できている。

「ナギサさん! 鈴也君が!」

「お前を先に行かせたらすぐに戻る! 今ここで止まるな! 無駄になるぞ!」

廊下を走りやがて地下へと続く階段が見えてくる。

「この先が怪しいな。さあ行け!」

「うん! 私行く! ナギサさん、絶対に鈴也君を助けて! ナギサさんも無事でいて!」

「ああ、約束だ!」

音羽は地下へ、ナギサは元来た道を走って戻っていく。