複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照5000突破感謝! ( No.263 )
日時: 2016/05/16 00:06
名前: ユッケ (ID: bKy24fC9)

榎原 七海の参戦により、より拮抗してきたかのように見えた戦況だが、混戦は何かが1つ崩れれば一気に覆り、傾く事がある。それも力が強いものが崩れれば尚更である。

「決着つけるわ! 能力学区1位はこの私! レイラ・レオンチェフよ!」

「テメェを倒して俺が1位になる! 死ねぇえええレイラァアアアア!」

超重力によって崩れた天井の瓦礫が九十九 神矢に向かって勢いよく降り注ぐ。すかさず頭上の空間を引き裂き、瓦礫が空間の中に吸い込まれるように入っていく。

「そんなもんかよ! 1位様よぉ!」

「フン……終わりよ」

「———ガハッ!!??」

神矢の頭に瓦礫が直撃し、その場に倒れる。

「瓦礫1つ分を無重力にして空中で浮遊させる事くらい簡単よ。あんた瓦礫を全部空間に入れて完全に避けたと思ってたでしょ? 残念、1つ入ってなかったのよ、空中で浮遊させてたの」

「……ぐ……ぅ……クソ……がぁ……」

頭に強い衝撃を受けて倒れたまま起き上がれない神矢、レイラは彼を見下ろし、とどめの超重力をかける。

「これでアンタとの因縁も決着よ。一乗寺! 大丈夫なの?!」

超能力者であるレイラが他で繰り広げられている戦闘に参戦する。そうなると戦況は大きく傾く。

「助かるぜ! 悔しいがこの糸目なかなかキレやがる!」

「オーケー! さっさと片付けるわよ!」

「これは……難儀やな……」

そもそも隆起の能力は超重力と相性が悪いと言える。隆起させようとしても重力で強く抑え付けられてしまえば全く隆起しない。ならば天井を隆起させ、重力を利用し攻撃しようとしても、無重力を作り出されてしまえばそれも全くのスローで攻撃にもならない。

「降参するなら痛くしないけど?」

「アホ抜かせ……僕らにもな……戦う理由があるんや!」

「それは私達も一緒よ! アンタ達に邪魔させない!」

絶対的な力の差は勢いなんかでは縮まらない。レイラの超重力の前に成す術無く、羽織部 準は地面に伏し倒れた。

「神矢も準もやられたのか……」

「悪いけど私達も決めさせてもらうぜ! みより!」

「行きますよーぅ!」

赤菜が炎で灯護を照らし出し、影に潜られないようにし、みよりが電撃を放つ。

「くっ!」

電撃を避けるのは難しい。光った時には当たっている。速度が人間のそれとは違う。

少しずつだが、灯護には電撃のダメージが蓄積していて、体が痺れて動きがどんどん鈍くなっている。

そして蓄積されたダメージが一気に爆発するように襲う瞬間が訪れる。

「っ!?」

灯護の痺れた体が突如動かなくなり、地面に転がる。

「これで動けないな」

「うぃ、しばらく大人しくしていてくださいであります」

「嘘!? 皆やられた?」

「よそ見とは余裕だな!」

一瞬の隙に一気に距離を詰め、千香が鋭い蹴りを七海に放つ。

「ッ!? きゃっ!」

咄嗟に両腕で千香の蹴りをガードし、地面に転がる七海。即座に水鉄砲を構えて引き金を引き水流の弾丸を放つ。それを千香が身軽に避ける。

「小春!」

「待ってましたッス!」

千香の後方、小春が手に持っているのは火の付いたライター。

「ぁ……ぁぁ……」

「見たな。終わりだ」

芽生えた恐怖を増幅させる。千香の感情増幅の術中に嵌ってしまったらもう逃げられない。バジリスクからは逃げられない。

「これで全員ね。さぁ、三好を追うわよ!」

「ああ、先に行ったやつらも心配だ…………っ!」

歩き出そうとした千香の足を七海の手が掴む。

「私は……負けてない……まだ……負けられない……」

「お前がそう思うように、私達も負けられない理由がある」

「ぅ……負けて……ない……」

七海の力が抜け、千香の足から手が離れる。

「なんだかスッキリはしないでありますよぅ」

「この戦いは初めからそういう戦いだった。お互いに譲れないものがあったからな」

「だからこそだ。早く三好のヤローに追いつくぞ! 大将がやられちゃ意味がねェ」

「ああそうだぜ! 祐、無事でいろよ!」