複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照5000突破感謝! ( No.264 )
日時: 2016/06/03 22:50
名前: ユッケ (ID: bKy24fC9)

■最強の否定、最大の拒絶■



剣の超能力、否定と拒絶の能力は発動している。だが、三好 祐に能力が効いていない。否定も拒絶もされていないのだ。

「なぜだ……! なぜ否定出来ない! 拒絶されない!」

「現人神 剣。キミはもう僕には勝てないよ」

「図に乗るなよ! 否定ッ! 否定ッ! 否定ッ! 拒絶ッ! 拒絶ッ! 拒絶ッ!」

剣は否定する。三好 祐の意味を……そして拒絶する。三好 祐の存在を……しかし彼は平然とその場に立ち、ジッと剣を見据え続けている。

「こんな戦いは……もう終わりにする!」

三好 祐が右手を前に出す。掌から閃くのは威力を抑えた電撃。

「そんなものが届くか! 拒絶!! ———っ! がぁあああああああああああ!!!」

電撃が剣を直撃する。三好 祐の放った電撃は拒絶される事なく、剣へと届いたのだ。

「祐……? 無事みたいだけど……なんか……変」

地下へと降りてきたのは千年 音羽だった。やっと追いついた彼女は三好 祐が無事で安心したかのように見えたが、彼の雰囲気がいつもと違う事に彼女は気付いた。今までの彼とは何かが決定的に違うのだと感じた。

「がぁッ! な、なぜだ! なぜ拒絶されない!!」

「キミにもう僕は否定できない。拒絶もされない。この勝負は僕の勝ちだ。だからもう、この戦いは終わりなんだ」

「終ってなんかいない!! 僕なんだ! 式宮 アリスを救うのは僕だ! お前なんかじゃない!!!」

「式宮 アリス……彼女は一体何者なの? 救うって何?」

「五月蝿い!! お前もキリエも、僕が全部消し去ってやる!! 最大の否定……最強の拒絶でな!!」

剣が超能力を発動させると同時に、建物が唸るように音を立て、揺れ始める。

「キャッ!」

「っ! 地震?」

千年 音羽は突然の揺れにバランスを崩し地面に座り込み、三好 祐は揺れる床の上を足の位置を移動させながらバランスを取っている。

「この力を最大に解放するのは初めてだよ。危険だからね。この建物を中心に半径100Mまでなら僕の能力で存在を否定し、拒絶する事で消し飛ばす事が出来る。
跡形も残らないよ。建物も、キミの仲間もね」

建物の揺れが徐々に激しくなっていく。否定と拒絶が発動するまでのタイムリミットが近付いてきているのだ。

「そんな事をしたら……キミの仲間だって消えてしまうぞ!」

「ああそうさ、だからなんだ! どうでもいい!!! 僕には式宮 アリス……彼女だけいればいい」

「なぜそこまで彼女に拘るんだ!」

「僕は彼女の過去を知っている! 辛くおぞましい過去だ! そんな彼女を救いたいとそう願って彼女の為に尽くそうと思った! だが彼女が選んだのはあろうことかキミだった」

(僕が選ばれた……だからなのか……夢に何度も出てきたのは……今度はハッキリと覚えているし、思い出せる)

「三好 祐! キミを消した後でキリエも消す! キリエは彼女の駒だ。だからこそ邪魔でしょうがない!」

(式宮 アリスとキリエが繋がっている? だとすると……凛人さんをやったのは彼女なのか?)

「さあ消えろ!! 肉体も! 存在も! 意味も! 全て無に帰せ! 三好 祐!!!」

建物の唸りが大きくなり、揺れもより激しくなる。真っ白な光が辺りを覆い、広がっていく。剣は王国のアジトを中心に半径100M。その全てを否定し拒絶する。

「祐! 逃げてぇえええええ!」

「ッ! 音羽!!」

「消えろ!! フハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」



















———私を否定できる? 拒絶する?















「っ!! 式宮……アリス……!?」

剣の目の前にいるのは、対峙していた三好 祐ではなく、式宮 アリス。彼女は問いかける。自分を否定できるのかと……拒絶するのかと……。

「ん……揺れ、収まった? あの子……確か前に公園で……」

音羽にも式宮 アリスが視認できていた。しかし、それは彼女本人ではない。三好 祐がなにかしらの超能力で自分を式宮 アリスに見せているのだ。

否定と拒絶の超能力は強力だが、剣が絶対に否定できないもの、拒絶できないものを見せる事によってその効果は無効化同然となる。

剣が絶対に否定できず、拒絶できないもの、それは式宮 アリスだ。