複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照5000突破感謝! ( No.265 )
日時: 2016/06/05 23:14
名前: ユッケ (ID: bKy24fC9)

揺れが徐々に収まっていく。剣に式宮 アリスは否定できず、拒絶もできない。

(間違いない。あの公園にいた子だ……なんでここに?)

千年 音羽は三好 祐とともに式宮 アリスに出会っている。あまりに不思議な少女であったため、印象には強く残っている。

彼女はふと思った……この少女は自分達の周りで起こっている事に何かしらの関係があるのだと……例えば宮本 みより……例えば王国……例えばキリエ……例えば凛人……例えば自分の兄……。

悪い事は全てこの少女が関係しているのではないかと、予感した。

「できる? 私を否定し、拒絶する事が」

「……ぐ……! ぅ……できない……だって僕は、キミを誰よりも救いたいと願っているのだから!!」

「そう……だったら……もうこの戦いは終わり」

「———ッ! 拒絶!———ガハッ!!」

衝撃波を受けて壁へと激突する剣。衝撃波を拒絶しようとしたが、式宮 アリスが放った能力を彼は拒絶できない。床に伏す彼は立ち上がる事も出来ずただ朦朧とする意識を保っていた。

「一体何者なの……あの子……そうだ! 祐は? どこに行ったの?」

「……くっ!」

式宮 アリスの姿が一変、三好 祐の姿に戻る。最初からこの場に式宮 アリスなど存在していない。彼の能力が式宮 アリスを映していたに過ぎない。

「祐? 祐の能力だったの? だって私たちの中に変身能力を持っている人はいない……衝撃波だって……何がどうなっているの?」

その場に座り込んだ彼に千年 音羽が駆け寄ろうとしたその時だった。

「千年! 逃げろ!!」

「え!?」

後ろから聞こえた声に驚き、振り返る。鈴也の肩を抱き、引きずるように走るナギサの姿がそこにあった。そしてそのさらに後ろから伸びてくる青白い手も……。

「う!」

「ぐっ!」

「キャッ!」

幽触。その力は呪いや金縛り。土御門 錦の能力である。音羽、ナギサ、鈴也の三人は幽触を受け金縛りにあい、その場に倒れてしまう。

(これ……ホントに体動かない……! 声も……出ない!)

(く……! すまない! 追いつかれてしまった!)

(先輩……逃げて……ください!)

「剣!? まさか……負けたのか……!?」

土御門の目に映ったのは三好 祐と、倒れている現人神 剣の姿。

「この戦いは僕達の勝ちだ! だからもう僕の仲間を傷つけないで!」

「いいや終わっちゃいない!! この三人を解放してほしいなら大人しくしていろ!!」

「……終わりだよ」

突如として三人を人質に取っていた土御門の姿が消える。そして三好 祐の目の前に彼が出てくる。これは泉川 日向の超能力。空間の入れ替え能力だ。しかし、三好 祐はこの能力を直接受けたわけでも、ましてや見たこともないはずなのだ。

「っ! 幽触!!」

「拒絶!!!」

「なっ!? ガァアアアアア!!」

土御門が咄嗟に放った幽触と共に、土御門はその場での存在を拒絶され剣と同じように地面に転がる。その瞬間、三人を縛っていた幽触が解ける。

「祐! その能力!」

「うん、さっきからくらってたからね」

「違うよ! そっちじゃなくて! その能力は……泉川さんの……」

「あの刑事さんの能力だったのか……」

「三好!! 無事なの?!」

レイラ達が地下の部屋へと入ってくる。欠けている者は一人もいない。この戦いは、三好 祐達の完全勝利という結果になった。しかし、三好 祐の表情はどこか寂しそうでもあり、悲しそうでもあった。

彼がずっと封印していた力。あまりに危険な能力のため、忘却していたその力を思い出し、使ってしまった……。彼は説明した……自分が封印していたその能力についてを全て……仲間達に嫌われてしまうだろうと覚悟し、語った。

「そんな能力が存在するというの!?」

「うん、事実だよ」

「祐が封印していたのも分かる……」

「ああ、恐ろしい能力だぜ」

「み、宮本でもこの能力の恐ろしさは分かりますよぅ」

「使い方一つで世界が変わってしまいます。こんな能力を先輩が持っていたなんて……」

「まさに超チート。世界はあなたを中心に廻っている」

「姉御? どうしたでありますか?」

「…………三好……お前……!」

「バジリスク! この能力は……!」

千香の表情は青ざめ、怒りに満ちているようにも見えた。ナギサの表情も決して良いものではない。明らかに他の皆とはどうしても反応が違いすぎる。

「ぐっ! もう一度言ってみろ……お前の本当の能力を!!! 冗談なら今のうちに言っておけよ!!」

「真実だよ。僕の本当の能力は…………」















———確率変換(パーセンチェンジ)

この世のあらゆる確率事象を操作する。可能性を自在に操る超能力。

ゆえに、自分が別の能力を持っている可能性を操作した結果、剣に対して変身能力と衝撃波能力を使い。土御門に対して空間入れ替えの能力と否定と拒絶の能力を使ったのだ。

まさに全能。彼が確率を操作すれば、街行く人が全員右に進む事もあり得るのだ。