複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照5000突破感謝! ( No.269 )
日時: 2016/06/19 10:15
名前: ユッケ (ID: aWtSrojt)

■今回の一件の後日談■




一般人からの緊急の通報により、中央能力学区にある一等大きな病院には、3人の患者が運び込まれた。羽織部 準、土御門 錦、榎原 七海の三人である。榎原 七海はずっと譫言のように〝原初”や〝降格者”といったいくつかのワードを口にしており、発見当初酷く取り乱していた事、その傍らに男の死体があった事から心的外傷の恐れ、何かの事件に巻き込まれた可能性が極めて高いと判断され、病院へと運ばれた。彼女はまだ話が出来る状態ではない為、面会謝絶となっている。

羽織部 準、土御門 錦の二人は、重度の怪我を負っている事から緊急の手術が施され、意識はまだ回復していない。

今回死亡が確認されたのは現人神 剣。彼の右足は太ももから半分がバッサリと切断されており、胸には銃弾の跡が見つかっている。














この病院に運び込まれた者もいれば、この病院で目覚めた者もいる。

東雲 凛人。彼の目が薄っすらと、ゆっくり開いてぼやける視界に光と、愛する人の顔が映る。

「凛人……? 起きたの?! 凛人!! ドクター!!」

「……ここは?」

「意識はハッキリしているようです。三代さん、ナースコールのボタンはそこのぶら下がってるやつですよ」

「泉川? なんでお前が?」

「凛人さんが入院したので、穴埋めに本部に呼ばれたんですよ。ちょっと待ってくださいね。すぐドクターがやってきますから」

「凛人! よかったぁ! このまま起きなかったら私どうしようかと」

「心配をかけたな……そうだ! アリス! アリスは!?」

凛人の記憶が蘇ってくる。あの日の夜。彼は死んだと思っていた天使の園の孤児、式宮 アリスに殺されかけた。彼には追わなければならない事件がある。解決に導かなければならない事件がある。その重要な手掛かりになるであろう式宮 アリスにあの夜出会った。

「凛人? ダメよ動いちゃ!」

「あの夜俺はアリスに会った! 彼女は天使の園の生き残り! やっと見つけた手掛かりなんだ!」

「凛人さん……それは……」

泉川 日向の表情が陰っていく。目線の先、隣には何を言っているのか解らないと言った表情の三代がいた。

「凛人、そのアリスって誰?」

「な、何を言っている? あの夜、俺はアリスにやられて」

「あなたをこんな目に会わせたのは、鷹東 キリエよ」

「———なっ!?」

「……三代さん、ここからは刑事としての話をします。なので病室を出てくれませんか?」

「そ、そんな! 凛人は目覚めたばかりなのよ! それにドクターがもうすぐ来るわ!」

「心配には及びません。すぐに終わります」

泉川の目は刑事の目をしていた。有無を言わせないその目に威圧され、三代は渋々病室を出て行った。

「すみません。三代さん」

「どうゆう事だ……泉川! 俺をやったのは」

「はい、確かに式宮 アリスです」

「だったらなぜ! 三代は俺がキリエにやられたと言うんだ!」

「凛人さんがここに搬送されてから、三代さんは警察の事情聴取を受けました。聴取を行ったのは神林(カンバヤシ)さんです」

神林 晃助(カンバヤシ コウスケ)。東雲 凛人の上司であり、凛人の所属する能力犯罪捜査班のリーダーでもある人物だ。

「神林さんが聴取を行っていた初めは、凛人さんがアリスという女の子にやられたと話していたそうですが、途中から一変して、キリエにやられたと言うようになったそうです」

「途中で話す内容が変わったのか? 三代は一般人だ、動揺もあっただろうし……」

「ええ、ですが、その聴取を行った神林さんでさえ、三代さんが初めから一貫してキリエが犯人だと言っていると、真実が変更されたのです」

「聴取の内容は録音してあるだろう? それを聞かせれば」

「もう行いました。しかし、神林さんは身に覚えがないと」

「馬鹿な! あの人はそんな適当な人じゃない! 俺はよく知っている!」

「私だって同じ意見です。いいですか? 私も聞いた聴取の録音に間違いは無いとして、当事者である三代さんや聴取を行った本人である神林さんが、私や凛人さんと違う事を言っている。そこで、さっき考えたんです。私と凛人さんが何故アリスという少女について覚えているか……何か共通点があるはずだって」

「解ったのか? その共通点」

「ええ、私たち二人の共通点、それは……超能力者である事です」