複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ ( No.27 )
日時: 2015/02/25 19:58
名前: ユッケ (ID: TzDM8OLf)

第二章
■赤く燃える■




以前までの僕は、能力のこともあり、周りにバリアを張り、必要以上に近寄らず、必要以上に近付かせず! 敵を作らず適度な関係を保つ!といった感じで、どこか怯えて生活していた。

秘密は大きければ大きい程自分に圧し掛かる。でも…

嘘つきは変わらないけど、前よりは楽になったかも。

「祐、途中まで一緒に帰ろ」

原因はこの子、千年 音羽だ。

激動のゴールデンウィークを共に戦った僕達は「え?何?付き合ってんの?」と言われるほど仲良くなっていた。

付き合ってはいません。僕達友達。

「うん、でも家まで送るよ」

「ええ! いいって! ちゃんと帰れるよ」

「ガラの悪い3年生達に絡まれてたのは、どこの誰ですか?」

「ぁぅ…」

うむ、昨日の事である。




下校中に公園の前で音羽を発見したのだが、3年の先輩3名に絡まれていたのだ。

先輩3名に囲まれ半泣き状態の上「ヘイキミ暇? 可愛いね。俺達と遊ばない?」と絡まれ「ノ、ノーサンキュー、アイアム、ゴーホーム」となぜか意味不明なカタコト英語でお返事していた。

(ヤバッ! なんとかしなきゃ!)

僕は他人の能力がないと無能力者と同じだ。先輩方が能力でなく暴力で攻撃してきたらマズイ!

「ぁあ? いいから来いって!」

(本格的にヤバイ! ええい! なるようになれ!)

飛び出して行こうとしたその時。

そこにグラサンにスキンヘッドの超怖いオジサンが通りかかった。

(これだ…!)

ひとまずオジサンを追い越して音羽のもとへ!

「お、お姉ちゃーん!」

だぁあああああ! 咄嗟の事だったからお姉ちゃんの設定にしちゃったぁああああ! 僕弟になっちゃったぁああああああ!!

「お、お姉ちゃん! お父さんが映画見に行こうってさー! さぁ早く! 早く行こう! お願いだから!」

チラッとオジサンの方を見て「これ僕達のお父さんです(嘘)」アピール。

「え? 祐? お父さん…?」

混乱する音羽。

「いいから話合わせて!」

小声で理解を求める。そしてすかさず手を握り脱出!

その後は何事もなく家まで音羽を送り届けました。



「昨日の今日だし、二人で居れば大丈夫だろうからさ」

「うん、分かった。お、お姉…ぷっクスクス…お姉ちゃんと一緒に…クスクス…帰ろうね〜」

超笑い我慢してるじゃん! なんか、思い出したら恥ずかしくなってきた!

「だぁああああああもう! ホラ! 早く帰ろう!」

「うん!」

なんか前にも笑われた事があったような気がする…。

まぁ、いいか…いいんだ、いいんだ…。

そんなこんなで会話をしながら…昨日、音羽が絡まれていた公園まで来た。

先輩方は居ないみたい…良かったぁ〜。

「祐、なんか音楽が聞こえる」

耳を澄ますと、公園の方からアップテンポな音楽が聞こえてくる。

「なんだろう…?」

「行ってみよ!」

「うわぁ! ちょ…!」

音羽が僕の手を握って走り出す。

公園の中では女の子が一人、ダンスを踊っていた。

「あれ、赤菜ちゃんだ!」

「…ほんとだ」

緋色 赤菜(ヒイロ アカナ)。僕達のクラスメートだ。

音羽と仲がいい。音羽繋がりで、僕も最近は少しだけ会話する。

赤く少しだけ長い髪がダンスに合わせて激しく揺れている。

「ワン・ツー…ここでターン…! あれ!? 三好に音羽じゃん!」

ターンの途中で僕達に気付いたようだ、ダンスを止めて手を振る。

「やぁ、緋色さん。邪魔しちゃった?」

「全然! アタシのダンスは赤く燃えるぜ!」

「赤菜ちゃんカッコイイーー!!」

「ヘヘヘ! おーよしよしよし!」

目をキラキラ輝かせて緋色さんの胸に飛び込む音羽。

犬を相手にしているみたいだ。音羽の頭をナデナデ。

「ちょうど良かった。暇だろ? アタシのダンス見て行ってくれよ」

「うん! 赤菜ちゃんのダンス見る!」

「いいの?」

「おう! 感じたままでいいから、感想くれ」