複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ ( No.29 )
- 日時: 2015/02/26 18:43
- 名前: ユッケ (ID: s7P63baJ)
■月明かりの下■
「ごちそうさまでした〜」
「おそまつさまでした」
音羽の手料理はとてもおいしかった。慎也さんと暮らしていた時も料理は音羽がやっていたらしい。
デザートに、造形の能力でリンゴを兎リンゴにして出してくれた。
「えへへ、可愛いでしょ?」
「うん、こういう使い方もあるんだね」
デザートも食べ終わり、二人で食器を洗いながらお喋り。
「ほんとにいいのに〜、ゆっくりしてて、洗い物は私がやるから」
「まぁ、このくらいは。僕も一人暮らしだから」
「そうなんだ? 多いよね〜一人暮らし」
「能力者は能力学区に集まるからね。家族ごと引越しって訳にはいかないでしょ」
「それもそうだね」
「そうだ、今度一緒に料理でも作る? 僕も料理は得意なんだ」
「祐が料理!? 見たまんまだね!」
「ええ!?」
洗っている食器を落としそうになった。見たまんまって……
「祐って中性的な顔立ちでしょ? 髪伸ばしたら可愛いと思うな〜」
「ぇえぇええええ!?」
「一人暮らし、料理も得意、可愛い、女子力高いね!」
「……ぁ…ぁぁ…ぅん…そうだね…」
やっぱり僕って男として認識されてない!? 男の娘ってやつか!? そうなのかぁああああ!?
「祐どうしたの?」
「ななな、なんでもない! なんでも…あ、コレ最後の食器」
「うん、ありがと!」
洗い物も終わり、時間は夜の8時前、そろそろ帰らなきゃ。
「ごめん、僕そろそろ帰るね。戸締りちゃんとするんだよ?」
「うん、今日はありがとう! おかげで…その…寂しくなかった!」
やっぱり寂しかったんだな。これからは少しだけでも一緒に居てあげようと、そう思った。
「いつでも頼ってね! それじゃ!」
アパートを出て公園の方へ戻る。僕の帰り道は、実は公園の近くを曲がった方なのだ。普段の帰り道なら公園を過ぎたところで道を曲がる。
しかし、今日は逆だから、公園前で曲がることになる。
(そういえば、赤菜が練習して帰るって言ってたな…もういないかもだけど、気になるし、行ってみよう)
そうふと思い立ち、公園の中へ、公園は薄暗くて少し不気味だ。すると赤菜の声が聞こえて来た。
しかし、何か穏やかじゃない感じ、声のする方へ走る。
「よぉねーちゃん俺達と遊ぼうぜ?」
「そっちのおチビちゃんもどお?」
「ちょうど3対3じゃん! ちょっといい店知ってるから、行こうぜ?」
うっわ! ナンパ三人組だ! 音羽を送って行って正解だった…じゃなくて、赤菜と後ろに二人女の子がいる。
赤菜が庇って守っているみたいだ。 一人は明らかに中学生だし怯えてる。
(助けないと!)
「コラーー! お前達何やってるんだー!」
大声で叫びながら走る。この声で誰か気付いてくれればそれでもオッケーだ。
「祐!?」
「あ! 昨日の奴だ!」
「やっぱおかしいと思ったんじゃ!」
「ウラァ! ざっけんなオリヤァア!」
三人組みの一人、鼻にピアスしてるから“鼻ピアス”。
そいつが懐から何かを取り出し投げつけてきた。暗くて見えない!
投げつけられた物が近くまで迫る! これは…石だ!
「ぐぅっ!?」
咄嗟に腕で顔と頭を守る。しかし石が容赦なく投げられたのではない。おそらく“物質硬化”の能力。鋼に撃たれたような痛みが腕に走る。
「オラァ! こっち見ろや!」
今度は金髪が3メートル上空から襲い掛かる! “脚力強化”の能力だろう。ジャンプ力が凄い。そんな蹴りをくらったら間違いなく骨折する!
「くっ!」
空中から振り下ろされる殺人キックをギリギリでかわす!
「祐! 無茶すんな! 逃げろ!」
赤菜が叫ぶ、赤菜は僕のことを無能力者だと思っている。超能力者であることを知っているのは音羽と先輩達だけだ…。
「おっとねーちゃん! 逃がさねぇぜ!」
しまった! 首にタトゥー入れてるやつが赤菜を狙った!
「アタシだって能力者だ!」
赤菜の能力は“炎を生み出し操る”能力。強能力程度の力だが火傷させるには充分だ!
赤菜の掌から離れた炎がタトゥーの顔面に目掛けて放たれる!
「残念だったなぁ! 俺の能力“火で傷が付かない体になる”んだわ!」
顔も髪も目も火傷なんかしていないし、焦げてもいない! 相性が最悪だ!