複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ ( No.33 )
日時: 2015/02/28 18:48
名前: ユッケ (ID: s7P63baJ)

公園を出て駅の方へ

「そういえば、宮本ちゃんって年いくつ?」

「12であります! 祐先輩も、私のことは、みよりと呼んで下さい!」

「じゃあみより、家族にはちゃんと連絡してる?」

「うい! 捜し物をするので遅くなると!」

「連絡してるのには安心したけどよ、遅くなりすぎじゃないか? みよりって携帯持ってる?」

「持っているであります!」

そう言ってポケットから携帯端末を取り出す。

「うひぃぇえええ!!! お姉ちゃんから鬼のような電話がぁあああ!!」

「相当心配してるだろうから、早く電話しないと!」

「は、はい! …………ひぃっ! ごめんなさい! ごめんなさーい!!」

お姉さん、相当お怒りのようだ。

みよりが色々と事情を説明している間に駅に着いた。

電車に乗って南能力学区へ、こっちに来るのは初めてかも。

みよりの案内で家を目指す。

「みよりはお姉さんと二人暮らしなのか?」

「はい! 優しいお姉ちゃんで、この髪飾りもお姉ちゃんからのプレゼントなのであります!」

そう言ってツインテールをピコピコ動かす。

「ようし! みより! 今日からお前はチビうさだ!!」

「はっ! 宮本みより! チビうさを襲名させて頂くであります!!」

赤菜は姉御肌な感じがある。頼れるというか、頼もしいというか、そんな雰囲気が伝わるのだろう。みよりとは良いコンビになりそうだ。

みよりの家の前ではお姉さんが帰りを待っていた。

「姉の美香(ヨシカ)です。みよりがお世話になりました」

「いえ、大事にならなくて良かったです」

「お姉ちゃん、赤菜先輩が守ってくれて、祐先輩がドーン!って悪い人をやっつけてくれたんだよ」

「本当にありがとうございます」

「ヘヘッ! みよりも、もう無茶すんなよ? お姉さんに心配掛けちゃだめだぞ?」

「はい! 先輩方、ありがとうございました!」

「じゃあまたね。みより!」

「またな! 今度はアタシが遊びに行くぜ!」

「楽しみであります! お元気でー!」

僕達の姿が見えなくなるまで、みよりは手を振っていた。

さて、今度は赤菜を送っていかなきゃ。

もう一度電車に乗る。

夜も遅く、乗っている人は少ない。

「あ、あのさ…祐って超能力者…なんだよな」

「う、うん…騙しててごめん」

「いや! そういうんじゃなくてさ、改めてスゲーなと思って…」

「凄くなんかないさ、レイラの言った通り、僕がちゃんとしていれば赤菜が危険なめにあうことはなかった」

「祐が能力隠してたのには、何か理由があるんだろ? アタシだってそのくらい分かるぜ。レイラの言ったこと、気にするなよって言いたかったんだ」

「…ありがとう」

優しいんだな、赤菜……でも、赤菜にこれ以上嘘つきたくない。

能力のこと、全部話そう!

「……赤菜!」

「は、はい!」

「なんで顔赤いの?」

「あ、赤くねーよ! 顔近い!」

「ご、ごめん。いや、そーじゃなくて! 僕のこと、ちゃんと話しておこうと思って…」

僕は赤菜に能力のこと、能力を多用した結果周りを傷付けてしまったことを話した。

僕の能力、“他人の能力を超能力として使う”能力。

才能を喰う呪い……。

「でも、最近は居場所もできた。音羽や東雲先輩や城戸先輩、僕のことを赦してくれた…少し楽になったんだ」

「……そっか、祐も苦しんでるんだな……へへっ! 見損なってくれちゃ困るぜ! アタシは祐を受け入れる! 祐は仲間だ! どんなことがあっても、アンタの居場所はアタシが作ってやるよ!」

赤菜の気持ちがとても温かい。

「ありがとう、赤菜」

「へへっ! 能力に苦労すんのはお互い様だ。アタシもさ、自分の能力好きじゃねーんだ。夢はプロのダンサー、なのに能力は火を作って操る。ダンスには役立ちそうにねぇ」

能力は、目覚めることの無い才能を発現させたもの……か

能力を生かした夢を抱く人は多い。その方が有利だから。

でも赤菜は能力とは別の夢を抱いた。

能力って…なんなんだろう?

夢と才能が合わない。実力が伴わない。他人の才能を喰う。

赤菜…みより…僕…。

もしかしたら、クミやレイラ…音羽も…。

考えても答えは出ない。

月明かりの下で、出会った僕らは…それぞれに何かを抱えているんだろうか……また、会えるだろうか…。