複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ ( No.35 )
日時: 2015/03/03 23:35
名前: ユッケ (ID: uSdQ/xFE)

地面がバキバキッ!と音を立てる!

「ちょっとレイラさん?!」

驚きのあまり絶句してした音羽がようやく我に返る。

「…グッ! …ぅ!」

「アンタの超能力が何かは知らないけど、使わなければ死ぬわよ!」

「やめて! レイラさん!」

「超能力者じゃないなら黙ってなさい!」

本当に超能力を使わないと死ぬ! でも、こんな事に使ってしまっては駄目だ! 使わない、この能力は使ってはいけない!

「僕…の…能力…は…使えば……グッ! …の…ろ…い…に…なる!」

「アンタは自分の才能を……誇るべき超能力を呪いと言うの……私は、そういうアンタが許せないっ!!」

「ガァアアアアアアアアアア!!!」

重力が増して地面が沈む! もう亀裂の走る音なのか骨が割れる音なのか分からない。耳元でバキバキと鳴る音がうるさい。

「やめてぇえええええ!! レイラさん短気過ぎっ! 祐は能力使って! 自分の命が大事でしょ! 迷う必要ないよ! 私は祐を嫌いになんてならないから! 能力を使って!」

「……ぅ…ぐぅ…ぅ…!」

「何で使わないの……アンタ自身の才能を否定して、私の才能にも立ち向かってくれないの? ……私を否定するの? ……アンタのそういうところが私を苛立たせるのよ……! 才能を呪いにしているのは、アンタ自身でしょうが!!」

「……!?」

最後の最後に気付く…いや、気付かされる…才能を呪いにしてしまっていたのは、僕自身だったのだ…と。

僕は知っていた筈なんだ…音羽を助けた時、慎也さんを助けた時、赤菜を助けた時、能力を意味のある使い方で使っていた。

能力として正しい使い方を僕は知っていた筈なんだ!

それに気付かず、全てを能力のせいにして逃げていた。

それが許せなくて、能力を無下にしている僕に苛立ちを覚えて、レイラは激怒したのだ。

人一倍能力に誇りを持っているレイラは、僕を許せなかったんだ。

ごめんレイラ…僕はもう……逃げないよ……。

「アンタ、一回死んだわよ……」

真っ暗な視界…静寂が支配する世界で、レイラの声が聞こえた気がした……。