複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ ( No.36 )
- 日時: 2015/03/05 23:07
- 名前: ユッケ (ID: Or1MUb1u)
どこまで行っても黒。
一面黒の闇。
僕が旅しているのは暗闇……。
体は無く意識だけで旅をする。
そして、甦るのは昔の記憶。
「僕、本当にどうでもいい事に超能力を使っていたんだな」
教室で、街で、家で、何でもないような事に使っていた超能力……。
「まるで王様だ」
全てを手に入れたかのような優越感に浸り、当たり前のように超能力を使っていた。
しかし、そんな毎日はすぐに終わりを告げた。
向けられた言葉は罵詈雑言。でもそれは因果応報だ。僕がしてきたことのしっぺ返し。
それでも足りないくらい、周りを傷付けてしまった。
もし、やり直せるなら……
やり直せるなら……
薄っすらと闇の中に光が広がる。
真っ白な天井。ほんの少しまだ痛みが残る体。
「ここ、どこだろう?」
「祐!? 気が付いたの?」
「…音羽?」
心配そうに覗き込む音羽。
「良かったぁ〜」
「僕、どうなったの?」
「その前に、祐。一発殴らせて!」
「ええ!?」
「問答無用!」
「ひぃっ! …痛っ!」
デコピンだった…拳じゃなくて良かった。
「ほんとに、死ぬまで能力使おうとしないんだから! 死ななかったから良かったけど」
「僕、死にかけたんだね…」
「ううん、そんなことないよ? 一週間で退院出来るって」
「ええ!?」
「良かったね」
「う、うん……そうだね、良かった…」
走馬灯みたいなの見ちゃった気がするけど、気のせいなのかな?
「僕は、逃げてただけだったよ。能力のせいにして、能力を呪いと蔑んで、逃げていたのは僕の方だ」
「答えは出た?」
「うん、僕能力を使っていくよ。もちろん、意味のある使い方をする! 安っぽいダイアの心は砕けたよ」
「うん! よろしい! 私のこと、信じてね」
「わかってる。音羽、ありがとう」
僕は確かに“超能力者の落ちこぼれ”だ。
でも、それでもいい、僕は能力を意味あるものにする。
僕を理解し、受け入れてくれる人達のためにも。
「あ! 先生呼ぶの忘れてた! 私先生呼んでくるね!」
音羽は医者先生を呼びにバタバタと病室を出て行った。