複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(オリキャラ&コメント募集) ( No.44 )
日時: 2015/03/09 12:59
名前: ユッケ (ID: 5G1Y6ug9)

■心の奥底■






僕が病院を退院したのは三日前、激しい運動は避けつつ学校には通った。

クラスでは「何があったの?」と色んな人から質問され、「銀髪ロシア人に超能力で潰されかけました〜」などとは言えず、答えを用意してなかった僕は咄嗟に「階段から落ちた」とありきたりな事を言った。

退院初日にして思わぬ詰めの甘さ、反省反省。

そして今日は日曜日、たまにはゆっくりしようと思い、部屋でゴロゴロしている。

点きっぱなしのテレビからニュースが聞こえてくる。

「昨夜、東能力学区第4地区で暴れていた男子生徒が、新型薬物パワーを所持していたことが分かり、警察は入手した場所などを聴取していますが、話のできる状態でないとし、生徒を一旦病院へ搬送しました」

やっぱり、まだ終わっていない。能力を発現させる薬物パワー。

能力の発現には個人差があり、階級も個人で限度がある。

広がる格差。能力者と無能力者。広く、深くなっていく溝。

そのどうしようもない格差、溝を無くそうとしたのが慎也さん。音羽のお兄さん。

しかし、夢の途中で彼は掴まされた。パワーを。

慎也さんの証言では何か飲料水か食べ物に混ぜられたのだという。

気付けば欲しくなっていた。得体の知れないものを。

そこにパワーを持ってきたやつがいる。

残念ながら朦朧とした意識の中で買ったから顔を覚えていないと言っていた。それも恐らく、主犯の企み。今回搬送された男子生徒も顔を覚えてはいないのだろう。更生出来るかどうかも怪しい。

「音羽や先輩と知り合ったのはゴールデンウィークの時か」

慎也さんを捜すため、闇も覗いた。

「バジリスク…」

「ここからは私の戦争だ」

コートを翻し去って行く彼女の後姿がまぶたに焼き付いている。

なぜだろう? …きっと心配なのだ。僕達と変わらない年齢の女の子が、闇の中で生きている。あれから姿も見ないし、一体今何をしているのだろう……。

そんな事を考えていると、突然携帯が鳴った。メールのお知らせだ。

「ん、どれどれ……およ? クミからだ。珍しい」

クミからのメール。これはとても珍しい。

輪の中で一際奇妙に個性を魅せるクミだが、基本は無表情。自分から連絡を寄越すことは無かった。そういう性格でないことも知っている。

故に珍しい、警戒する。というか、心配。

よほどの緊急事態? いや、それなら電話の方が早い。

文面を見ると、“二人だけでお話がありますので、例の公園(パワースポット)まで来てください。”とのこと…。

「お話ってなんだろう?」

“了解、すぐ行きます”と返信し、部屋着を着替えて、公園へと向かった。