複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ(オリキャラ&コメント募集) ( No.50 )
- 日時: 2015/03/10 16:33
- 名前: ユッケ (ID: 7POxSCHv)
耳を疑うようなお願いに僕は言葉を失った。
というか、待った……いつもみたく、「冗談で〜す」とクミが言うのを…。
しかし、いくら待ってもクミは言わない。
「な、何言ってるのさ!」
絶えかねて僕がようやく口を開く。
クミの表情はいつも基本は無表情だけど、今回は真剣な気がした。
だから気圧された…というべきか、考えるより先に言葉が出た。
「……すみません、端折り過ぎましたね。私の話、聞いてくれますか?」
「…う、うん。事情を説明してもらわないと、訳がわからない」
「では、説明します。三好さんはビリー・ミリガンをご存知ですか?」
「うん、多重人格者…だっけ?」
「そうです。そのビリー・ミリガンです。今思えば彼は現代で言うところの、“超能力者”だったのかもしれません」
「いや、多重人格っていうのは解離性障害のことで———」
「私がそうなんですよ。私の中にはもう1人私が存在する。そしてそれが私の“能力”でもあるのです」
「多重人格が……能力?!」
「性格には二重人格ですが……私は無意識に能力によって作り出してしまったんです。私自身では手に負えない、もう1人の自分を…」
「でも、能力で作ったのなら消すことができるんじゃないの?」
「いいえ、私の能力は人格を1つ作ること、消すことも、別の人格を作ることも出来ません。
私に能力が発現した途端に作られた人格は…正反対…いえ、これこそが本当なのかもしれません……もう1人の私はとても残虐な人格でした」
「だけど、クミは残虐なんかじゃない! そっちの人格は表に出てない!」
「今まではそうでした…力は互角、バランスを保ち、私が外に出さないようにしていました。でも彼女は最近、私の力を上回ってきました。
私の能力階級は“強能力者”対して彼女の能力階級は“大能力者”だったのです」
「人格によって能力階級が違うのか……でもそうか、それで抑えられなくなったんだね」
「そういうことです。なぜ階級が違うのかは分かりませんが、私より彼女の方が上なのは事実。抑えるのが困難になってきました」
「それで、僕に彼女の暴走を止めてほしいと?」
「そうです。……初めてここで会った時、私は“超能力者の落ちこぼれ”を捜していると言いましたね。白状すれば全てこの為です。
大能力者に勝てる見込みがあるとするなら超能力者……あの時、知り合いに超能力者がいなかった私が頼れたのは、ちっぽけな噂話だったというわけです」
「みよりは実質強能力者だしまだ中学生、危険な事には巻き込みたくない。そこで頼れるのがレイラか僕になったわけだ」
「銀髪ロシアンには、あの日の帰り道にお願いしました。そしたら三好さんを頼るよう言われました。ロシアンの能力ではクミさんという本体ごと潰してしまいますから、三好さんの能力ならどうにかなるかもしれない…と」
「それも含めての強襲だったわけか……確かに、あのままの僕じゃあ能力は使わないだろうね」
レイラめ、本当に殺してでも僕に能力を使わせる気だったんだな。
今更ながら恐ろしい。もし僕の考えが変わらなかったら、今頃もうあと2度3度の襲撃を受けてミートパテになるところだった!
「そういうわけで、クミさんには僕っ子超能力者しか頼れる人がいないのです。おお、可愛そうに…シクシク」
「さっきまでの真剣さはどこに?! …はぁ、分かったよ。要するにクミのもう1つの人格に勝てばいいんだね?」
「はい、必要なら腕の三本や四本折っても構いません。ニュッと生えてきますから」
「数多い! 腕生えない! まったく、こんな時でもクミはクミだね」
「フ…ええ、クミさんはクミさんです。では、彼女のこと、お任せします」
「うん!」