複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ(オリキャラ&コメント募集) ( No.60 )
- 日時: 2015/03/12 21:12
- 名前: ユッケ (ID: DZWfhZUD)
「キミが大人しくしているって約束してくれれば、僕もこれ以上は何もしないから」
そう言って彼女を諭す。
しかし、そんな容易く諭される彼女ではなかった。
「うるせえッ! 私がどう生きようと勝手だろうが!」
激昂し彼女が攻撃をしてくる。
しかし、真っ直ぐ伸びてくる骨の槍は僕の鎧に無残に散った。
特殊骨格は通常の骨よりも硬く軽いのが特徴。
当然超能力ともなると硬さや軽さが段違いになる。
彼女は大能力者、僕は超能力者。
力の差は歴然で、どんなに彼女が攻撃してこようが弾き、砕いた。
腕での掌握! ……砕いた!
鎌や刀の斬撃! ……弾いた!
槍の突進! ……砕いた!
「ちくしょォ! ちくしょォ!! ふざけんな! あってたまるか! 私と同じ能力なんて!」
「も、もうやめてってば! キミを傷付けるつもりなんかないし、大人しくしていてほしいだけなんだ!」
「傷付けないのは、この体がクミの物だからだろ! 勝手に生み出しといて大人しくしてろ、出てくるな、とはどういう了見だ!」
「クミが主人格だろ? クミの意向に従わないと」
「まっぴらごめんだ! うんざりだぜ! どれほどの人間をブチのめしたと思ってる! 殴ってくる腕を折り、蹴ってくる足を割り、酷い事を言う奴は頬骨を砕いてやった! 全部私がやったんだ! それが私の生まれた意味だったから!
私が生まれた瞬間に流れ込んできた……ドス黒い感情は、それこそクミの意向そのものだ! イジメや虐待を受けていたクミ自身の願いだ!」
「だから、対価として自由にしろと?」
「そうだ! 私を否定なんかさせない!」
「じゃあクミはどうなるのさ!」
「私には全てが無かったんだ!! 体は? 声は? 目も! 鼻も! 口も! 髪の毛も全部クミの物だ! 私には何もない、笑い合えない、助け合えない、許しあえない、私という存在が本当じゃない。
ない! ない! 何も無い! 唯一あったのは能力! これだけは私だけの物だった! 一番大事な物! 私の証! そうだったのに! テメェが全部奪っていったんだァアアアアア!!」
「———!?」
衝撃を受けて体が動かなくなる。心臓の鼓動が早くなる!
僕の体を貫く骨…出血のせいだけではない、怖れていた…能力を使った事で誰かを傷付けてしまうことを。
僕が……奪った? 彼女の一番大事な物…。
彼女にあった唯一の能力さえも、僕は…奪ってしまったのか…これじゃあまるで……
——————————昔と同じ
才能を喰らう……呪い!!
「周りを傷付ける? 才能を喰らい尽くす? 当然でしょ! 私達超能力者は天才なの! 無慈悲に、無自覚に、他の才能を殺す!」
あまりにも無慈悲に、無自覚に、人を傷付けてしまう。
思い出す…怨嗟の言葉…。
「お前さえいなければ!」
「三好一人でやればいいだろ!」
「返せよ! 俺達の意味を!」
「お前なんかに、俺達の努力が分かる訳ないだろ!」
「結局必要なのはお前だけじゃないか…」
「お前は! 何もかもを奪っていった災厄だ!」
僕は……結局変われてなかったんだ。
また、沢山の人を傷付けるのか…僕は……!
「アンタ、一回死んだわよ……」
レイラが僕に言った一言が、頭の中で繰り返されていた怨嗟の言葉を消し去っていった。
そうだ、僕は死んだ。
昔の僕は、もう死んだ!
レイラが、くだらない事でウジウジしていた僕を殺してくれた!
「祐の過去とか、能力とか、そんなの知らない! 私は祐と一緒にいたい!」
音羽の真っ直ぐな気持ちを知って。
「だってさ〜、どうする? 三好君」
「東雲は、あなたの味方です。辛い事があったら何でも相談して、ね!」
先輩達が味方してくれて。
「……そっか、祐も苦しんでるんだな……へへっ! 見損なってくれちゃ困るぜ! アタシは祐を受け入れる! 祐は仲間だ! どんなことがあっても、アンタの居場所はアタシが作ってやるよ!」
赤菜と熱く信頼し合って。
「せんぱ〜い! 先輩が早く退院できるよう、宮本は毎日お祈りしているであります!」
みよりに慕われて。
「フ…ええ、クミさんはクミさんです。では、彼女のこと、お任せします」
クミに頼られて。
「皆がいるから怖くない! 僕は僕の能力を、傷付ける能力になんてさせない! 全部救う! クミも彼女も! 両方救ってやる!」