複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ(オリキャラ&コメント募集) ( No.62 )
- 日時: 2015/03/16 23:08
- 名前: ユッケ (ID: OJkPnYHE)
時間にして2秒…。
僕が我に帰るまで、帰ってくるまでの時間は長く感じたけど、実は短い。
ドクドクと流れる血が脇腹を流れていく。
彼女の言葉が心に突き刺さり、骨に体を貫かれたような錯覚をしたが、脇腹をかするように抉っているだけだった。
それでも痛いし、ただの怪我じゃない! でも…!
「こんな怪我がなんだ!」
一歩、踏み出す! 彼女に向かって!
彼女の心に向かって、踏み出す!
「クソッ! 急所を外したか! 今度こそ死にやがれェ!」
真っ直ぐ、僕の心臓に向かって伸びてくる骨!
僕はまた骨の鎧を作って守る! 超能力を使う!
「テメェ! また———!」
彼女の能力、彼女の意味、彼女が彼女である為の唯一の方法。
僕が使う…超能力として使う!
何度も、何度もぶつかる!
そして砕ける! 僕の鎧を貫くことなく砕ける!
そして一歩、また一歩、彼女に近づいていく。
「僕の能力、受けたり触れた能力を超能力として使う能力」
「ひっでぇ能力じゃねぇかよ! テメェさえいれば世界は回る! 王のような能力だ!」
「違うよ、僕は誰かの助けがなければ無能力者だ。自分一人じゃ何も出来ない、僕一人は弱い人間なんだ」
「超能力者が何を偉そうに! 全てを奪って、全てを手に入れて! それがテメェのやり方だろうがァ! テメェに私の何が分かるんだよ!」
「……キミは言ったよね、自分には何も無いって、笑い合えない、助け合えない、許し合えない、本当じゃない。
僕達も同じなんだよ。人間は違いを求めるけど、違いを受け入れられない。
僕もそうだったし、周りもそうだった。
笑い合えない、助け合えない、許し合えない、信じ合えない、分かり合えない」
(僕達の世界は、そんな世界…)
いくら超能力で作った鎧でも、何度も攻撃を受けていればやがて壊れる。
それに、彼女は大能力者だ。能力の強さは平凡では無い。
鎧に走る亀裂が、その猛攻の凄まじさを物語っていた。
一歩、また一歩と歩み寄る…
(でも———!)
「一人じゃない! 一人じゃ生きられない!」
鎧が砕け散る!
「!?」
それと同時に彼女を強く抱きしめる!
「世界なんて知るもんか! 僕がキミを認める! キミはここにいる! 必要なら僕が居場所を作ってやる! 僕にも、そうしてくれた仲間達がいるから、今度は僕がキミの…仲間の居場所を作る!」
「わ、…私を…認める? 何言ってんだよ…クソッ…何で私…泣いてんだよォ!」
「きっと、一人じゃないって思えたからだよ。
これからは笑い合える、助け合える、許し合える、信じ合える、分かり合える」
「でも…私は…クミの能力で作られた人格…一人の人間ですらない」
「…名前を考えたんだ。ミク。クミの裏、でも別、ミクはミクだ。それ以外の何者でもない!
クミとは別の人間、ミクだ!
能力も名前も、ミクにしかないもの…ミクの証だよ」
「私の…名前…? ミク……。
お前、バカかよ…私の名前にするには、可愛すぎだ…」
初めて見せた、心の奥底からのとびっきりの笑顔で、彼女は帰って行った。
そして戻って来るのはクミの人格。
「おかえり」