複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(500参照突破感謝!) ( No.73 )
日時: 2015/03/21 21:20
名前: ユッケ (ID: qeFyKwYg)

第三章
■闇の中で蠢くモノ■




物事の裏表、メリットとデメリットはよく光と闇で表現される。

例えばこの街、能力学区は能力者が集まる日本の中心だが、一方で衰退していった街は少なくない。

それはここ、東能力学区でも同じ……繁栄した場所があれば衰退する場所が必ず存在する。

なぜ、何の為にそんな仕組みが必要なのか? 天秤、上と下、繁栄と衰退、裕福と貧困、能力者と無能力者、光と闇。

なぜ…と思うが実は簡単。公平(フェア)だからだ。そうあるのが公平だから光と闇が存在するのだ。

光も闇も、どちらも逆転するし、どちらにもなる。極めて公平。

それがルール、世界の仕組み、世界そのもの。

受け入れなければならない。ありのままを…。

目の前の現実がそうなのだから仕方が無いと、受け入れること。

その上で前に進むか否かで決まる。生きるか、死ぬかが……。

少女は進んだ。世界が公平なら進もうと思った。

出来るだけ沢山の仲間と一緒に、この暗闇を進もうと思った!

周りから見れば、死者の国からやってきた行進する骸骨。

墓場を踊り、闇を蠢き、乾いた音を響かせて行進する骸骨の群れ。

墓場で朽ちている骸骨を拾い上げ、問う。

「進むか、朽ちるか、選ぶのはお前だ」

繰り返してきた。

闇の中で、その問いを……。

問う度に、自分にも同じように問いかけた。

そうやって少女達は生きてきた。

でも、それでも途中で朽ちてしまう者達もいる。





「遅かった……のか……」

雨の中、少女は地面で泥にまみれて倒れている男を見つけた。

男の名は、上村 豊和(ウエムラ トヨカズ)。

彼もまた、闇の中を行進してきた少女の仲間の1人。

だが、彼に生気は無く、体は傷だらけで無残な姿だった。

おそらく自分で訳も分からず傷付けたのだろう。

口から大量の出血……歯はボロボロ……。

幻覚を見て何でもかんでも齧ったのだろう。

「クソォッ!!! なぜだ! なぜそんなものに手を出した!!」

もう返事もしない抜け殻に向かって叫ぶ。

「見つけて殺してやるッ! 絶対に殺すッ! ドラッグなんか持ち込みやがって! よくもッ仲間をオオオオオオオオオオ!!」

雨の降る空に向かって蛇は睨み、吼える!

「うわぁああああああああああああああああ!!!!!!」

闇が蠢く、闇の中で蠢く。

骸骨、蛇、死神、暴力、格差、薬物。

蠢いていた闇は感染症のように伝染していく。広がっていく……心に、ヒトに、街に……。