複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(500参照突破感謝!) ( No.82 )
日時: 2015/03/25 14:23
名前: ユッケ (ID: GrzIRc85)

さらに東雲先輩から、鈴也君が大手家電メーカーの跡取り息子だと聞いて、場は更にヒートアップ!

それから暫く散々騒いだが、とりあえず皆落ち着き、改めて自分達の自己紹介をした。

それでも、鈴也君は黙ったままだ。

「ではイエデターグリーンの家出の理由は分からないと」

「ええ、何度聞いても教えてくれなくて、ご両親には連絡してあるから大丈夫だけど、やっぱり心配なのよ」

「その宇宙の戦闘民族みたいな名前は決定なんですか? しかも戦隊モノみたいだし、やめてもらえますか?」

おお、鈴也君が喋った!

さすがクミだ。口先じゃ敵わないな。

しかし、エスカレートしてしまっても良くない、ここは渡し舟を出しておく。

「クミはこういうキャラなんだよ」

「こーゆーキャラでーす」

クミが謎のポーズをとって左右に揺れる。

「はぁ、つまりアホですね…」

「同感ね、気が合うじゃない」

レイラが銀髪…じゃなかった…プラチナブロンドの髪を優雅に揺らしながら鈴也君に近付く。

クミに振り回され同盟結成かな?

「レイラさんですね?」

「あら、一発で名前覚えたの? やるじゃない」

「簡単ですよそのくらい。元素記号を一発で覚える方が難しかったですよ」

「はぁ!? 一発で覚えたの?!」

「おや、中央能力学区で超エリートとして君臨するレイラさんが、元素記号も覚えられないと?」

「一発じゃなかっただけよ! 化学はちょっと苦手なの! それでも勉強すれば化学でも1番とれるわよ!」

「へぇ〜レイラも鈴也君も、勉強凄いんだ?」

「ふん、あんたみたいな落ちこぼれとは違って、私はエリートなの」

「僕は化学が特にってだけですよ」

「はいはーい! 宮本は化学はワケワカ(訳が分からないよの略)であります!」

「勉強しなくても体動かしゃいいんだよ」

「私も勉強苦手〜! 教えて〜!」

いつの間にか皆で楽しく喋っていた。

鈴也君はまだ慣れない感じだけど、初回にしては上々だよね。

「三好君、ちょっと」

皆の輪からはずれて、東雲先輩が手招きする。

「どうしたんですか?」

「鈴也君は本当は友達とかそういうのが苦手な子なの。だから次はきっと距離を取ろうとするわ」

「無理させちゃいましたか?」

「ううん、そんなことはないけれど、きっと彼はそうする。だから彼が距離を取っても歩み寄って行ってほしいの。あなた達なら、彼のいい友達になってくれると思うから」

僕達なら……きっとなれる。

クミに振り回されて、レイラと同盟を結んで、みよりとは年が近いみたいだから、気兼ねなくお喋りして、赤菜と音羽がお姉さんして、鈴也君はきっと楽しく笑える。

僕がそうだったみたいに、居場所になる。

「はい! 心配しないでください。鈴也君はもう友達ですから」

今度は僕が、誰かの居場所になる番だ。

世界は広くて光も闇もある。

呪いだとか、格差だとか、そういうの。

でも、何が相手でも負ける気がしない!

僕達が陽だまりの中で笑いあう事を、誰にも邪魔はさせないし、壊させもしない!

絶対にさせない! そう胸に刻み、僕はまた皆の輪の中へ戻っていった。