複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ(500参照突破感謝!) ( No.89 )
- 日時: 2015/03/31 16:00
- 名前: ユッケ (ID: Me0ud1Kf)
■繋ぎ合う手■
出て行ってしまった鈴也君を捜して、夕暮れの中を走る。
でも、きっとあそこにいるんだろうな…という事はなんとなく直感していた。
「やっぱり、ここってパワースポット?」
例の公園のベンチに、落ち込んだ表情で鈴也君が座っていた。
そこまで歩いて行き、声をかける。
「帰ろう、鈴也君」
「三好さん……すみませんでした。生意気に啖呵切っちゃって」
「気にしてないよ。友達でしょ?」
「…………」
東雲先輩から言われた通り、鈴也君はやっぱり距離を取ろうとしている。
ちょっと前の僕みたいだ。
超能力で周りを傷付けて、それからは誰とも必要以上に仲良くはならず、一定の距離を保って生活していた。
レイラは言った。超能力とは無慈悲に無自覚に他の才能を殺す…と。
僕と鈴也君は似た境遇なのかもしれない。
周りより強い才能を持ち、距離を置かれて、だから自分から距離を取っている。
「…僕、友情とか苦手ですから」
そう呟いた鈴也君は哀しい顔をしていた。
「認められないから?」
人を、才能を、夢を、認め合えない…僕達は同じ世界で一緒に住んでいるようで、実は誰も同じ場所になど居ない。
「はい、誰も僕を認めないし、夢も親の夢の続きを任されるだけ、だから僕も誰も認めないです…」
御影 鈴也。大手家電メーカーの跡取り息子で、中学2年生で大能力者。
求められるのは親の夢。
「鈴也君……」
僕は手を差し伸べる……決めたから…こうするって決めたから。
別人格さんに言われた「超能力者って言っても何でもかんでも救えるわけじゃねぇ…神でも聖人君主でもねぇしな。所詮はヒトだってこった!」
ヒトがヒトに出来る事はたった一つだ。
手を伸ばす! 手を差し伸べる! たとえ届かなくても、手を!
それぞれが孤独な世界で戦っているこの世界で、僕らは手を伸ばし合う。
それが、世界を倒す唯一の方法。
「三好…さん」
鈴也君が僕の手を握る。
彼もきっと、孤独な世界で戦って、誰かに手を伸ばしていたのだ。
「こうして手を繋ぎ合うのって、認め合うって事なんじゃないかな」
少しだけ笑顔を見せた鈴也君。
これからも、僕達はお互いを認め合いながら、生きていく。
鈴也君だけじゃない、音羽・赤菜・みより・クミ・ミク・レイラ…もしかしたらバジリスクとも、認め合っていける。
僕なら…僕達なら出来そうな気がする!