複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(500参照突破感謝!) ( No.93 )
日時: 2015/04/02 17:40
名前: ユッケ (ID: cetVlQWk)

「…………いいだろう。だが、信用するわけじゃない。お前の超能力はなかなかに利用出来そうだ」

「うん! 今はそれでもいいよ。さて、次に共同戦線への参加者を募る。これは無理強いじゃない、嫌なら嫌とハッキリ言ってほしい。ここから先は本当に危険だから」

今の段階で決定しているのは僕とバジリスクだけ。

音羽、鈴也君、小春ちゃんは頭数には入れていない。

「私はもちろん参加だよ!」

「私は姉御の右腕ッスから! どんなところだろうと姉御について行くッス!」

「僕も参加ですよ。それから、伝えておかないといけない事があるので」

「伝えておかないといけないこと?」

「はい、僕がパワーの売人を捜していた理由です。認めてもらいたかったというのが本音ではあるんですけど、もう1つ、理由があるんです。
僕の父さんの会社は西能力学区にあります。その会社の従業員の中に、パワーを使って能力を手に入れようとしている人がいるんです」

「それってつまり……」

「はい、今は東能力学区だけで売買されていますが、おそらく、他4つの学区に広がるのも時間の問題です。
大人達は能力を手にしたいはずです。これから入社してくるのは能力者。会社での地位が危うくなる……それに、自分達は大人だから、パワーを服用しても大丈夫だと慢心する」

「……能力開発が始まったのが確か20年前……その頃は能力の発言は極々稀で、能力者という存在自体が都市伝説だったって聞いたことがある……。
本格的に能力の発現が成果として現れ始めたのが12年前……」

「今の大人に、能力持ちはほとんど存在しない……。たとえ能力開発を受けても、能力は大人になってからでは発現しない……」

バジリスクの言った通り、能力は大人になってからでは発現しない。

能力開発は幼少期に受けるのが一般的でベスト。

そこからは個人差があり、早い段階で能力が発言する人、中学に上がってやっと発現する人など様々だ。

もっと言えば、能力の発現は年を重ねるごとに発現しにくくなるのだ。

そして、発現しない人もいる……。

「私の親は、能力の発現が遅かった私を捨てた。
私に能力が発現しないと思い込み、早々に捨てた……。
今頃は別のガキでも生んで、どっかで暮らしているだろう……もっとも、そのガキも捨てられているかもだがな」

「私も……ッス……私は今でも能力が発現してないッスから……」

「そんな…ことが…」

いや、僕は知っている……能力の発現が少し遅かっただけで酷い扱いを親から受けた人物を……。

クミ……彼女は能力の発現が遅かった……それだけのすれ違い、なのに、親から受けた虐待の数々……親だけじゃなく、学校でも無能力者だとイジメを受けていた。僕はクミからそれを全部聞いていた。

能力…求められるのは親の夢…勝手な期待…勝手な都合…勝手な理屈……彼女達を闇に追いやり、人食い蛇に仕立て上げたのは……卑怯な大人達だ!

「私のお兄ちゃんは……ラッキーだったのかな…」

確かに音羽のお兄さん、慎也さんは無能力者だ。

それでも、ラッキーなんて事があってたまるもんか!!

たとえ能力が発現しなくても、愛情を受けられないなんて事があってたまるか!!

もちろん、慎也さんのように愛情を受けて育ち、無能力でも頑張っている人は世の中には沢山居る。

皆がそうなればいいのにと思う。

この世界を嫌いになんてなりたくない。悲しいとか、憎いとか、そんなもので埋め尽くしたくない……。