複雑・ファジー小説

Re: 終焉の黙示録 ( No.3 )
日時: 2015/04/02 14:17
名前: 謳われる小鳥 (ID: rc8CMmgA)

1 少年と、正念と、背負うネント



 —1—


二人の人間が街を歩いていた。

時は夕刻。太陽が疲れたと言わんばかりに光度を下げてゆく頃で、大小二つの影は縦に長く伸びる。
レンガ造りの美しい町並みが夕日に冴えていた。
昼に活気良く営業していた店は看板を片付け、代わりに夜が本番の店が開店し始める。

そんな中で、一人の少年と一人の女性は、仲良く並んで歩いていた。

一人は、まだ15にも満たない少年である。
しかしそれは外観だけで、中身は30をこえている。それはドワーフという種族ゆえであった。
冒険者のような服装をし、普通のドワーフがもっているような剣や髭をもっておらず、かわりに腰に杖を差していた。
短い薄茶色の髪と目をしていて、小さい以外はドワーフの特徴を持たない。

一人は20代前半の女性。
見目麗しいその小さな顔の上には、焦げ茶の猫耳がぴょこんと飛び出ていた。顔の横にあるべき耳はなく、耳と同じ色のツインテールが隠している。
放漫な胸を隠そうともせず、胸元の大きくあいたオレンジジャケットと、ショートパンツを身にまとっていた。

一見すれば仲の良い兄妹である。

もっとも—————その会話は、『仲良く』とは程遠い物であったが。


「レグレシアが暴走するから隊長が逃げたんでしょーが」

「貴方がしっかりしてないチキンだからでしょっ。私のせいじゃないもんだ」

「何ぃ! ぼくがヘタレだと言いたいのか?」

「ドワーフのくせにすっごく弱いし。ホント頼りになんない」

「ぼくは魔法が得意なのだ。君みたいな脳筋にいわれたくないね」


レグレシアと呼ばれた女性が、鋭いチョップを少年に繰り出す。少年は難なく受け止める。


「・・・・・・ヘタレが何やってるんだ。魔法で強化された体なぞ、この猫獣人様にかなうと思っているのかな?」

「ぼくはヘタレじゃないって言ってるだろう、ちょっとだけ注意深いだけだ。君はつっぱしっていっつも隊長に迷惑かけてるじゃないか」

「よく言うね、キリハ。戦闘が出来なくて魔法に逃げたくせに」

「魔法に興味を持っただけだ。別に逃げたってわけじゃない!」

「やーい、やーい、腰抜け、やーい」


キリハと呼ばれた少年が、丸めた拳を女性の腹にたたき込む。女性は難なく受け止める。

魔力灯に照らされるレンガ道の中央で、レグレシアとキリハはしばらくの間黙りこんだ。

そしてまた歩き出す。



———あれ、話題、ずれてね?

キリハが『隊長』を忘れていたことに気がついたのは、とっぷりと夜が暮れた時だった。



・ ・ ・

以下作者より

主人公が一話目に出てこない・・・!?
はい、お察しのとおり『隊長』なる人物が主人公であります。
二話目はもっと意味が分かる文にしたいです。でも忘れないで下さい。意味のわからなさは伏線になるということを・・・!!