複雑・ファジー小説
- Re: 【ぷりーず】アウトロー!【オリキャラ】 ( No.36 )
- 日時: 2015/04/07 22:21
- 名前: 羊青 (ID: F2lwV46U)
第一章五話「王宮からランナウェイ」
夢を見た。
巨乳のお姉さん(女中服着用)が自分を抱きしめてくれる夢だ。
女中服はなんともいえぬ柔らかい生地で出来ており、それ以上に柔らかいものが自分の顔の左右にある。
うへへと締まりなく笑いながらお姉さんのスカートの中に手を潜り込ませた時、カインの体に強い衝撃が走った。
「うわっ!?」
「おや、起きたのか」
つんつんと頬をつつかれる。ぼやける視界にうっすらと見えるのは、強くくっきりとした青い瞳だった。
ヒリヒリと痛む頭を撫でながら起き上がれば、その瞳の持ち主……金髪碧眼の少年は少し後ろに下がった。カインははて、と首をかしげる。
俺はさっきまで王宮の庭を走っていたはずだ。
何故こんなところに……やけに豪華な部屋にいるのだろうか。
盗賊という職業柄、モノの良し悪しくらいは心得ている。
この部屋にある家具は、全て最上級のものだ。普通に暮らしていれば、庶民には一生縁がないだろう。
……ますますおかしい。いくら王宮だからといって、たかが女中にこんな部屋を与えるか?
そこでカインは気付いた。ここが女中の寝泊まりする部屋ではないことに。
「……ふむ」
ちら、と下を見る。
先程までカインが寝ていたであろうソファーから、毛布がずり落ちかかっている。恐らくここから落ちたせいで目が覚めたのだろう。
「……ふむ?」
……そして、傍らで腕を組む気の強そうな少年を見やる。
彼は何かを期待するような表情で、じっとカインを見つめていた。
よくよく見ると上品で整った顔立ちをしており、身につけている服もなかなかの代物だ。ちょっとフリルが多いのが目につくが、まあこの年頃ならば男の子でもおかしくはない。
「なあ君、俺に何があったのか教えてくれないか?」
少し身をかがめて、少年に問いかける。カインより十歳は年下であろう少年は、「いいだろう」と何故か偉そうに頷いた。まだ声変わりのしていない高い声がカインの質問に答える。
「僕の名はロイズ。赤毛の盗賊が逃げているのが見えたので、引っ張って落とし穴に落としたところ、盗賊は気を失った。僕は君を担いで自分の部屋まで連れてきたというわけだ。ところで盗賊、お前の名前は?」
「……ん? いやちょっと待て? 途中までよくわかるんだが、途中からおかしいぞ?」
「名前は?」
「いや名前よりもだな、なんでお前は落とし穴に俺を落としたんだ? いや盗賊を捕まえるため、とかなら話はわかるよ? でも俺今ここにいるわけじゃん? じゃあ捕まえるためではないじゃん?」
「名前は?」
「しつっこいな! お前人の話聞いてる!?」
「僕はロイズだ。お前と呼ぶのも呼ばれるのも気分が悪い。さっさと名前を教えろ」
「あーもうだから……っ、もう! いいよ、俺の名前はカインだ! これでいいだろ、ロイズくん!?」
「カイン……」しばらくその単語を口の中で反芻してから、ロイズというらしい少年はパアッと目を輝かした。なんか怖くて一歩後ずさっちゃうカインであった。
ロイズはうんうんと何度も頷く。
「カイン。カインだな? いい名前だ。僕もそんな名前が良かった。ロイズなんて面白みがないからな」
「う、うん、そうだね、そうだからちょっと下がってくんない、っていうかロイズくん何者なんだよ!!」
「僕? 僕か?」
ロイズは可愛らしく首をかしげた。きょとん、という擬音がついてまわりそうな動作だ。
「僕は王子だ」
あっそうなの。
思わず納得しそうになったカインは、その言葉の意味がわかった瞬間思わず吹き出した。
王子。
王子?
王子とはあれか、鶏が産むやつじゃなくて、国王の子供という意味か。
うん、確かに色は白いが、ロイズは卵には見えない。
ということは、ということは。
「お……おうじさま、だったのか?」
「そうだ」
一瞬で顔から血の気が引くのを感じた。
カインは知っている。王族は絶対的な権力を持っている。彼らの期限を損ねれば、不敬な態度をとった奴だと処刑されることを。
どうする、思いっきり突っ込んじゃったぞ、思いっきりタメ口しちゃったぞ俺!?
ここは土下座しかないんじゃないか?
スライディング土下座でなんとかできるんじゃないか!?
スライディング申し訳ございませんでしたああああ!でいける!!!のか!!!?
0,2秒でパニックに陥るカインをよそに、ロイズはあくまでも平然と笑ってみせた。
そして。
「僕を誘拐してくれ、カイン」
にっこり笑顔で、犯罪教唆を始めるのだった。