複雑・ファジー小説
- Re: 【ぷりーず】アウトロー!【オリキャラ】 ( No.4 )
- 日時: 2015/03/31 23:18
- 名前: 羊青 (ID: F2lwV46U)
第一章 「王宮からランナウェイ」
新月の夜、高くそびえ立つ王宮の屋根の上を走り抜ける男ーー「盗賊」がいた。
「いたぞ! 矢を放て!」
短い怒鳴り声を合図に、大量の矢が男に向かって放たれた。男は信じられないくらい軽々と躱してみせ、それどころか下で驚いている騎士団の面々に手まで振ってみせた。
月がなく、表情も見えないが、その顔がにやけていることははっきりわかる。騎士団長のスルージは、苦々しい思いで奥歯を噛み締めた。
男はふわりと飛び上がると、虚空に姿を消す。屋根はかなり高いが、あの身のこなしを見るかぎり、落ちて死ぬような無様な真似はしないように思える。
走りやすい地面におりてから目的地へと赴く、ということだろう。
……目的地。盗賊が目的地とするところ。それは勿論……。
「追え! 追え!! やつの狙いは宝物庫だ! 先回りしろー!!!」
「了解!」
騎馬隊が東の宝物庫に向かって走り去る。スルージも、キッと屋根の上を睨みつけて、すぐにそのあとに続いた。
……十数秒後、屋根によじ登る影がひとつ。
「……見事に騙されたもんだねえ、騎士団長っていってもあんなもんか」
赤紫の艶のある髪を軽く梳きながら、その影……「盗賊」、カインは嫌味ったらしく笑ってみせた。
その顔立ちは優美で繊細で中性的といってもいいくらいで、そのくせどこか豪胆さを感じさせる不思議なものだ。
まあ、いわば、美形だ。色男だ。
「さあて、俺はお目当てのモノを……っと」
そんな色男盗賊、カインのお目当て。
それは、「女中(メイド)さんプレイ」だった。
最近巷で話題の「コスチューム・プレイ」。海軍の制服やら水泳用の露出の高い服だとか白衣だとかメガネだとか、特殊な衣装を着て行う大人のアレだ。
カインも何度かやってみたのだが、所詮衣装は衣装。偽物だ。どの風俗店でも、制服も水泳着も白衣もどれも薄くてペラペラテラテラとした安っぽいものだった。
もちろん、「女中」もそうだ。
カインは「女中というからには、長いスカートで清楚で白いエプロンが一層可憐に見える優雅でガードの硬いアレだろう」と思っていたのだが、とある風俗店で注文してみて愕然とした。
ミニスカート。
ネコミミ。
ニーハイソックス。
信じられなかった。
こんなの女中じゃない。俺の望むのは、もっと貞操観念の高そうな洋服なのだ。こんなインランなの女中じゃない———!!!
というわけで、今に至る。
別に普通の貴族の屋敷にも女中はいるし、わざわざ王宮までこなくともよかったのだが、やはり女中の質の良さなら王宮のほうが勝るだろう。
どうせならいい女とヤりたいからな、とカインはゲスい微笑みを浮かべる。
幸いなことに、王宮に忍び込む実力や女中を虜にする魅力はある。ことは結構簡単に運ぶだろう。
ここまで聞いてお気づきになられる方もいるかと思うが、カインは馬鹿である。
そして、下衆である。
そんな馬鹿でどうしようもない色キチ盗賊は、意気揚々として女中が寝泊まりする部屋へと向かっていったのだった——。