複雑・ファジー小説
- Re: 【ぷりーず】アウトロー!【オリキャラ】 ( No.41 )
- 日時: 2015/04/15 20:09
- 名前: 羊青 (ID: F2lwV46U)
【参照五百記念!!! 何やればいいのかわかんないから小話書くぜ!】
特別短編 【騎士団長スルージと愉快な仲間たち】
「はぁ......」
爽やかな午前10時少し前、短い金髪をかきむしりながら、見目麗しい青年が重苦しい溜め息をついた。
ゼルフ・ニーグラス、若き騎士団副団長である。
秀麗な容姿と年齢に似合わない実力、そして何より溢れんばかりのサポート能力を買われ、スルージ直々にその肩書きを賜った。
ーーその時は死ぬほど嬉しかった。その時、は。
今彼の隣には、白髪を緩くハーフテールにした青年がたっている。鎧を身に付けることが多い他の団員と違って、黒い軍服姿だ。彼のスラリとした体型には似合うと思うが、腰につけた鞭も相まって、少々浮いている感は否めない。
というかはっきり浮いている。
裏のあだ名は女王様、ルーカス・ロイ。騎士団の小隊長をつとめる男だ。
手には団長のサインが必要な書類。
しかしここに団長はいない。
ただ、二人の目の前で春色のカーテンがひらひらと揺れているだけだ。
「あのさ、ゼルフ、ひとつ聞かせてもらえる?」
「......なんだ」
「団長どこ?」
「............弟さんがいらしてますよ、と言った次の瞬間消えた」
「......僕の思い違いでなければ、団長は転移魔術使えなかったと思うんだけど......!?」
普段は冷静なロイの額に、汗が一筋。
ああもうあの人は仕事もせずに何をやってるんだド変態ブラコン野郎、と、ゼルフは頭を抱えて踞りたいのを必死に抑えた。
★
「久しぶりだなセリティア」
「お久し振りでございます、アシュリー殿。兄はどこにおりますでしょうか」
「団長なら執務室にいるはずだが」
ありがとうございます、とその団員に一礼してセリティアは廊下を左に曲がった。
赤毛の女騎士はその背を見送りながら少し首をかしげ、なにかあったのだろうかと呟く。その疑問も、セリティアが手にしている淡い青色の箱を見て解消された。騎士団長がいつも使っているやけに可愛いランチボックスだ。おおかた弁当を忘れでもしたのだろう。
彼女の予想は当たっていた。
「全く、兄さんも仕方ないひとですねー。大事なとこが抜けてるってゆーか」
ぷんすことぼやくセリティアに、すれ違う男たちが羨望の眼差しを向けていく。中には話しかけようとする者もいるが、連れ合いに必死でとめられる。
騎士団長の最愛の弟(妹)だ。なにか粗相があれば懲戒免職だけでは済まない。
○○○切られる。
そんな男たちの荒ぶる感情はいざ知らず、セリティアは律儀に挨拶を交わす。なんと礼儀正しい人だろう。こうして「団長の弟(?)を愛でる会」はちゃくちゃくと広がっていくのだった。
現在、騎士団のほぼ全てが会員である。
「ん? セリティアか?」
「あっ、兄さん」
びくん。
一瞬で、廊下にいる団員の動きが止まった。
騎士団長スルージ、降臨。
彼が普段どれ程セリティアを可愛がっているかはみんな知っている。
弟がどれ程可愛いかを、皆一様にひたすら語られている。
そんなスルージは、セリティアに普段どのように接しているのだろうか。
なかば怖いもの見たさで、誰もが二人に視線を向けたーー。
「執務室にいらっしゃるのでは?」
「いや、さっきトイレに出たところだ。なにか用事か?」
「ああ、はい。兄さんお弁当忘れてましたよ?」
「......えっ? あっ、そうだったのか? 気付かなかった」
「変なところで抜けてますもんね兄さんは」
「失礼な奴だなー......ほら、わかったから帰れ。仕事あるんだから」
「むっ。なにか言うことはありませんか?」
「はいはいありがとありがと」
「兄さんはいつまでも私を子供扱いして......はぁ、もう。今度から忘れないでくださいね?」
「はいはい。早く帰らないと叱られるぞ」
「ちゃんと許可貰ってますし。では、失礼致しました」
「おう、気を付けろよ」
あれ、普通だ。
ちょっと仲良しだけど、超普通だ。
安堵と僅かなガッカリ感。兄弟はごくごく普通に会話を終え、セリティアは騎士団本部をあとにする。
なんだ意外と普通なんですねー、と一人が声をかけようとしてーー飛び退いた。
「ああああああ可愛いわああああなんであんな可愛いんだよおおおあああああああ」
ばんっと拳が壁に叩きつけられた。放射線状のひびがいく筋も走る。
それを見た瞬間、まわりが確実に三歩ほど引いた。
「あああああ天使天使優しすぎるわまじ天使俺の弟とか信じらんない天界から降りてきた天使だろあれ絶対家事完璧で基本的になんでもそつなくこなすとかほんとなんで俺なんかの弟に産まれ落ちてくれたんだよおおお完璧超人じゃねえか可愛いいいあああ」
いやお前も立派な完璧超人だよ、とは誰も突っ込まなかった。
ただ、慌てて駄々っ子のような三十路男を引きずっていくゼルフの姿に、涙しなかった者はいなかっという。
(参照感謝!!)