複雑・ファジー小説
- Re: Dead Days ( No.1 )
- 日時: 2015/04/25 22:14
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
目に飛び込んできたのは、鮮やかな色彩だった。
黒、赤、桃、黄、緑と、この5色が存在し、混ざり合うことなく蠢いている。
四方八方どこを見渡しても、そんな色たちが混同し、絶えず変化し続ける光景が広がっているだけの静かな場所だ。
しかしそんな中で、確かに存在しているナニカがある。
アゴが外れたかのごとく、大きく口をあけて絶叫する仕草を見せる——人の形をしたナニカが。
人間の手にあたるもので、抑えるように頭を抱えている。見ている限りでは、しまった、という声が聞こえてきそうだが——苦しそうにもがいているようにも見える。どこか、何かに飢えているような。底なしのバケツに血を満たすのと同じように、絶えず何かに飢え続けている。そんな感じさえする。
5色だけが存在する、鮮やかで混沌としたこの空間。
人の形をしているナニカも、当然その5色で彩られている。
この空間は、一体何なのだろうか。
心なしか、どこかで時計の針が動くような音もする。
だが、確かなことが1つある。
これは、心に大きな傷を負った仲間を助けるための戦いなのだ。
「っ!」
人の形をしたナニカは、突然襲い掛かってくる。悠然と、まるで瞬間移動のような速さで。
当然である。奴はこの空間の支配者——すなわち奴にとって、ここは自分だけの空間となる。
有利にならないはずが無い。差し詰め、混沌の支配者と言ったところか。
混沌とした鮮やかな色彩。
その中でカメレオンのように擬態するナニカは、右手らしき部位をサッと振り上げた。
何か握っているのか、手のような形をした部分は握りこぶしの形となっている。
対して相対する少女は素早く後ろに飛び、剣を握る両手の力を篭めた。
「ごめんね……すぐ楽にしてあげるから……」
楽にする——その言葉の意味が、果たしてどのような意味を持っているのか。
少女にしてみれば"解放"の意味を篭めているが、今後の展開次第では、"死"の意味に早変わりする。
ナニカに向けられた、楽にするという言葉。しかしそれは聞こえることなく、虚しく虚空へと消えてゆく。
「ちょっと痛いけど、我慢してよね!」
右手には剣1本。左手には短刀1本。
防具は、腕輪。右手に嵌められた、この空間で唯一七色に輝く虹の腕輪だ。
少女は以上の武具を以って、混沌へと立ち向かった————