複雑・ファジー小説
- Re: Dead Days ( No.4 )
- 日時: 2015/04/26 16:23
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
「私は元・生徒会長よ。貴方の名前くらい把握してるわ」
「あー」
この人を見て以来、俺は何か既視感を感じていたのだ。
どこかで見たことあると思ったら——そうだ。長い黒髪でも有名なこの人は、元生徒会長の"白鷹千秋"
廃校寸前だったこの学校を復興させ、更にPTAから金を集めて全教室にエアコンを取り付けたことでも有名である。
人柄はともかく、実績は確かである。
「失礼ね、貴方。私は人柄も良いのよ?」
「自分で言うな、自分で」
まあ何にせよ、これで先輩——千秋先輩の摩訶不思議な力とやらは理解できた。
「で? それがどうしたってんだよ?」
「——レッドナイト現象以降、私を始めとして様々な——そうね。異能者とでも言うべきかしら。そんな人たちが現れた。最初に言っていた優希さんも、恐らく異能者の1人よ」
「あの、声を聞くだけで眠くなるってやつが?」
「察しが良いわね。そう、あの子の力は当にそれ——とても危険なものよ」
もみ上げを人差し指に絡め、クルクルと巻きとる先輩。
その仕草さえも優雅に思える。
「危険、なのか?」
「えぇ。昔、睡眠薬を使って自殺する人がいたでしょう? 原理はアレと同じよ。過剰な睡眠作用によって死ぬの」
そこまで言いかけて、先輩は机から降りた。
「そこで、貴方の出番なの」
「俺?」
一体何故だと問う前に、疑問に対する答えが返ってくる。
「気付いていないかもしれないけど、貴方も異能者に覚醒しているわ」
「は? 俺が?」
「えぇ。物的証拠もあるから、見せてあげる」
そういいながら、先輩は胸ポケットから手鏡を取り出した。
鏡になっている部分をこちらに向けるや否や、俺の前に差し出され、俺の蒼い瞳が鏡一杯に広がる。
「自分の目をよく見なさい。虹彩に何かしらの変化があるはずよ」
言われるがまま、俺は自分の目の奥を見つめる。
「これ、は……?」
心なしか、虹彩に何か紋章のようなものが浮かんでいるような気がした。
紋章とはいえどんなものかは、言葉では説明し辛い。
強いて言うなら、ファンタジー小説とかゲームによく出てきそうな——いわゆる魔方陣のようなものである。
「私も今気付いたのよ。その類の紋章が刻まれているということは、貴方は相当強い力を身に宿しているわ」
すっと手鏡が遠ざかり、そのまま先輩の胸ポケットへ吸い込まれていく。
随分と古いものだったが、何か思い入れがあるのだろうか。
「紋章の種類とか知ってんのかよ」
「えぇ。私、考古学に少し興味があってね。その時調べた魔術に関する文献を見ていたら、丁度レッドナイト現象について書かれていたのよ。つまり——レッドナイト現象は過去に一度起きた、乃至は予言された現象なの。紋章の種類まで、ご丁寧に解説されていたわ」
「ん? だとすると、レッドナイト現象って過去に一度起きてるのかよ?」
「まだそこまでは知らないわ。でも、予言されたか一度起きたか——文献として残っている限り、その二択になるわね」
再び机に座る先輩である。
椅子ではなく、机。行儀が悪いぞと言いたいが、話を聞くために黙っておくことにする。
「話を戻しましょう」
立つのが段々疲れてきた俺は、教室の電気をつけて適当に椅子に座った。
長らく照明として機能していなかった所為か、明かりの点き方や光の強さが疎らで、中には激しく点滅しているものもある。
鬱陶しいので、その部分だけ俺は電気を切った。
「晃君の紋章はね、私の知る限りでは——"無に帰し有に在り"という力を持つの」
「……もうちょっと分かりやすく説明してくれ」
「——ある出来事をなかったことにして、代わりに違う出来事で上書きする。簡単に言えばこういうことよ。この言葉の意味が、貴方には理解できるかしら?」
「んじゃー、あれか? テストで赤点取ったらそれを100点にしちまうってやつか?」
「……そう、とも言うわね」
強ち間違ってはいない——そう言ったところを見ると、何か諦めのような感情が窺えた。
丁度外では日没を終え、空が赤く染まりかけている頃だった。
