ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

　　　　　◆




　別れるのは、出会ったから。


　彼が私に向けた『別れの曲』は、私が以前に聴いたものとは違っていた。旋律が何回もブレる。リズムもメロディーも狂う。居た堪れなくなった私が近くに寄ると、彼は焦ったように鍵盤を叩く。本来なら、もっと優しく、穏やかな曲だったはずなのに。

　もう聴けないよ。
　私の手によって阻止された彼の指先は震えていた。


「俺は、汚いから」

——汚せないよ。

　彼の口が私の名前を呼ぶ。彼の瞳からは涙が零れていた。彼の透明な涙を見て、思わず「綺麗だよ」と言葉を彼の頭の上から落とす。

　綺麗だよ、貴方は、とても綺麗。






「汚れてるよ、俺は……汚い」



　じゃあ、私も汚して。あなたと共に往きたいんです。あなたになら、汚されてもいいの。


　あなたとなら、地獄へ堕ちたって構わないんです。