複雑・ファジー小説

Re: 幽霊ズ me up *【キャラ募集予定?】 ( No.5 )
日時: 2015/05/10 22:50
名前: Iesset (ID: EEo9oavq)

三話「死亡フラグ」


 酒場を出た頃、すでに日は沈み始め、にぎやかだった繁華街はすっかり人通りが少なくなっていた。女を運ぶために再び憑依した富裕霊を先頭に、俺と忍霊は人が入りづらいような入り組んだ路地裏に入った。
 「こんだけ目立たなきゃ大丈夫だろう」
 行き止まりまで来ると富裕霊はスルッと女の口の中から抜け出て、再び女は抜け殻のようになって地面に横たわった。
 「目覚めるまでここに置かしてもらおう。人に見つかったら面倒だしな……………ところでお前ら、この後予定あるか?」
 「あーごめん。僕昔の幽霊友達と同窓会あるや」
 「マジかよ……せっかくおもしろいところ連れてこうと思ったんだけどなー。あ、生霊は来れるよな?」
 「生霊って……勝手に名前つけるなよ」
 「まーいーじゃんか、名前ねえと呼びづれーし。生きた霊なんだから間違っちゃいねーだろ?」





 「さーて、ここだぜ」
 森の奥の古い病院の前に富裕霊は止まった。真夜中の森は何故か虫の鳴き声すら聞こえず、不気味なほど静まり返っていた。
 そして、尋常じゃないほど体がそわそわする。
 「嫌な予感しかしないんだが」
 「ああ、半端ねー霊気だな。こりゃすげー」
 「まさか、相当な数いるんじゃ………」
 「いいや、ひとりだ。間違えねー」
 数年前からこの病院は心霊スポットとされている。闇医者に臓器を取られて死んだ霊が、生きた人間を恨めしく思い、臓器を奪うらしい。ただの噂ではあるが、ここに来た人間が不可解な死を遂げていることは確かだそうだ。
 「なあ、本当にこんなところに遊び半分で行っていいもんなのか?」
 「ここにいるのは生きた人間に恨みを持っている怨霊だ。死んでるオレらのことは気にしねーだろう」
 「そうは言われてもやっぱりあったこともない霊様のテリトリーに勝手に入るのは………って先行くなよ」
 「ごちゃごちゃ言ってるからだろ、早くしろ」
 富裕霊は全く躊躇もせず入り口に通り抜けて行った。
 「スー………はあ〜………」
 今となっては呼吸のできない死んだ身体で無理矢理深呼吸をし、俺も中へと入った。

 「うぐっ、何だこの臭い…鉄のにお………」
 いや、血の臭いだ。
 病棟の廊下の床に血がズルズルと引きずられたような跡が残っていた。
 まるでこっちにおいでと案内するかのように。
 「お前、触覚だけじゃなくて嗅覚も生きてんのか?」
 「え?」
 「普通、死んだ人間に嗅覚は無えぞ」
 「………悪いけどその話後にしてくれないか?目の前の気味悪い光景を目にするので精一杯だ」
 「そうか、じゃあ帰ってから酒場でゆっくり話そうぜ」
 「帰れたらね」
 「おいおいフラグか?」
 その時、急激に体がそわそわするのを感じた。強烈な霊気。

 ___近くにいる。

 「やっぱり、余計なフラグは建てないことだな」