複雑・ファジー小説
- Re: 幽霊ズ me up *【キャラ募集始めました】 ( No.9 )
- 日時: 2015/05/10 22:56
- 名前: Iesset (ID: EEo9oavq)
- 参照: 突然の忍霊視点。視点切り替え多いので慣れて下さいな。
五話「覆面野郎の同窓会」
二人が心霊スポットで激闘していた頃のお話。
*****
「みんな帰ったね」
かつての幽霊友達と盛り上がった同窓会。時間と共にひとり、またひとりと懐かしい顔は帰って行き、気づけば僕と死霊官の二人だけが店に残っていた。
「成仏してた奴、多かったな」
人間に憑依していた僕と死霊官は、長いことチビチビと酒を飲みながら他愛もない会話をしていた。憑依した肉体が悪かったせいか酒があまり美味しく感じられないので、カフェラテを注文する。
「嬉しい事じゃないか」
「ああ、おれらもさっさと未練をなくして、成仏したいな」
___未練。
僕の、この世への未練。それは、一生叶うことはないだろう。
今でも、あの時の光景を思い出すと憎しみが煮えくり返る。
「そういえば、忍霊の未練って」
「死霊官の未練って何なの?」
聞かれる前に聞いた。自分の未練なんて、過去なんて、話したくなくて。
死霊官も察したらしく、それ以上聞こうとはしなかった。
「おれは名前の通り、陸軍の司令官だったからよ。家族と過ごす時間なんてこれっぽっちもなくて、妻の死に顔も見られなくて、それで………」
家族。
死に顔。
「娘だけは死んでも見守ろうって、そう思っ」
「僕の唯一の家族の死に顔は最悪だった」
「………え?」
「いや、顔なんて見てる余裕なんかなかったっけ」
思い出したくない。
考えたくない。
「僕の母さん、目の前で散々いたぶられて殺されたんだ、最期に苦しそうな目でこっちを見た時、僕やりきれなくなって目をそむけちゃってさ、もう気付いた時には母さんの目に光は無くて、体はぐちゃぐちゃで血が噴き出しててさ、あいつ笑いながら斬り続けたんだ、何度も何度も何度も何度も何度も、肉の断片になるまで、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も」
「おい! ……………落ち着け?」
ようやく我に返った。
___何百年も前の事じゃないか。何を取り乱してるんだ、僕は。
「……お客様? 大丈夫ですか?」
店員が不安そうに僕の顔を覗き込んだ。
ああ、そうだ。カフェラテを頼んだんだった。
コップを受け取り、グビグビと一気に飲み干した。
「ごめん、死霊官」
何だかもう駄目だ。帰ろう。