複雑・ファジー小説
- Re: (合作)闇に嘯く 1−4更新 ( No.6 )
- 日時: 2015/06/10 21:47
- 名前: 狐 ◆4K2rIREHbE (ID: O/vit.nk)
夜闇の中、唯一流れてくる葉擦れの音を聞きながら、潮は周囲の気配を探っていた。物騒な事件が起きているわけだから、村人たちが誰1人として外出していないのは頷けるが、それでもこの静けさは異様だった。
道に沿って並ぶ家々からも、明かりどころか、人の住んでいる気配さえ感じられない。この静寂さは、まるで廃村を歩いているのかと錯覚してしまうほどで、これまで陰陽師として任務をこなしてきた潮からしても、不気味に感じられた。
(……それだけ、事態は深刻と言うことか……)
早く解決せねば、と心の中で意気込んで、空にぽっかりと浮かぶ満月を見上げる。
幸い、今夜は月光が強い。敵を見つけるには、好都合だった。
不意に、うなじにぴりりと鋭い何かを感じた。潮は、咄嗟に仕込んでいた短剣を引き抜くと、反射的に後ろに飛び退いた。
(現れたか──!)
確実に気配があった闇を睨んで、潮は身構える。しかし、睨んだ先に見えた影は、慌てたように手を左右に振ると、潮に近づいてきた。
「おいおい、落ち着けよ。俺だって、俺」
「……なんだ、お前か」
見慣れた無精髭を認めて、潮は肩の力を抜くと、短剣を鞘に納める。千里は、そんな潮に、やれやれといった様子で、肩をすくめた。
「ったく、危ねえなあ。気配感じただけで、いきなり斬りかかってくんなよ。俺だったから良かったものの、一般人だったらどーするんだ」
「……こんな状況下で、背後から近づいてくる方が悪いだろう」
諭すように言い返して、潮は千里に向き直った。
「……それで? 何の用だ?」
問いかけると、千里は腰に手を当てて、面倒臭そうに頭を掻いた。
「いやあ、別に。見かけたから声をかけただけだけど」
「見かけたから? そんな下らない理由で話しかけてくるな」
「だって仕方ねえじゃん、暇なんだから。やっぱ、今夜は何も出ねえだろ。事件だってこんなに頻発してんだ、製鉄所の建設だって先伸ばしになるだろうし。もっとゆっくりやろーぜ」
千里はそう言って、くわぁっと大きく欠伸をした。しかし、潮は千里の言葉に顔をしかめた。
「何を言ってる。製鉄所の建設は延期になどならない。だから今回は緊急の任務で、こうして急いでるんじゃないか」
「緊急の任務?」
怪訝そうに聞き返してきた千里に、潮の眉間の皺が深くなった。
「……そうだ。製鉄所側からの要望で、先延ばしにしたくはないから、早く解決してくれ、と。陰陽寮でそう説明を受けただろう」
「はは、そうだっけ?」
「……貴様、また眠りこけてたな?」
千里は、反省の色を見せることもなく、軽い調子で謝った。
