複雑・ファジー小説

Re: そして蝋燭は消えた。 ( No.4 )
日時: 2015/05/21 06:37
名前: 橘ゆづ ◆tUAriGPQns (ID: Ft4.l7ID)

(4)2きっとそんな夢を見た。

青年視点。


 ばちり。
赤く腫れぼった目を開けた。
自分は喪服。周りももちろん喪服。


「まさか死ぬなんてネエ。」
「アア驚いた。あんなに若いのに。」


 辺りを見回すと僕が知らないような、遠い遠い親戚たちがしくしくと泣いていた。
その顔も何処か仮面を被っているようだ。
 僕はこの空間を異常に感じていた。
なくなってしまった
祖母は亡くなったばかりだし、ばあさんの為にもと祖父はまだまだ死にそうにない。
しかも会話を聞く限り、若い人が死んだようだ。

 誰だろう。

 事故で亡くなったユウコちゃんでもないし、霊に憑かれて死んでしまった綺麗なお姉さんでもない。
ユウコちゃんの恋、秘かに応援してたんだけどなぁ。
失敗に終わっちゃったね。可哀想に。
 白色が好きだったお姉さん。この世に絶望して、白い部屋で眠るように死んでいったお姉さん。

 違う、違う。
 誰だっけ。

考えを巡らせても答えは僕の頭のなかに見つからなかった。
僕が知らないということは、学校の同級生か何かだろう。
それなら知らなくともおかしくはない。
 だけど何故か、心は空虚だった。
悲しいわけじゃない。心が、空虚だ。


「ご焼香を。」


 人々が一人一人棺桶の前に立つ。
自分も棺桶の前に立たなければいけない。

 立ちたくないのは、なぜだろう。

身体が鉛のように重くて、冷水をかぶったのこどく汗が出る。
 嗚呼、でも。
お経の能面のようなのっぺりとした雰囲気に呑まれて、ゆるゆると棺桶の前に座った。
 誰が死んだのだろう。
棺桶を覗きこむ。


「あ、」


 棺桶のなかには僕がいた。
これは、僕のお葬式だった。


そんな、夢を見た。



(2きっとそんな夢を見た)
続く。