複雑・ファジー小説

Re: 蒼穹のゼロ〜天空警察捜査第一課事件記録〜 ( No.11 )
日時: 2015/06/18 21:59
名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)

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 それから二時間。蒼太は棒のように固まった筋肉を懸命に動かし学校から少し離れたショッピングモールの外にあるベンチに力無く倒れ伏していた
 横では、ジュリアが今までの捜査の結果を茶色い表紙のシンプルな手帳に書き記している
 結果から言えば、無しだ
 被害者の失踪場所や学校近辺を中心に探索したり、聞き込みなどもしたが何一つとして成果は上げられない
 聞き込みに関して愚痴を溢せば、遊び半分でやっていると思われ軽くあしらわれるのだ。中には「興味半分で首を突っ込むんじゃない」とか何とか言われて、厳格な雰囲気のじいさんから逃げたときもあった
 今だけ、蒼太は疫病神の名探偵を羨ましく思う
 はあーと溜め息を漏らす彼の横でジュリアはうーむと言って首をかしげる。可愛い。
 
「やっぱりもう、寝てるんですかねー。まだ、こっち(下界)にいると思ったんですけど」
「寝るって上(天界)に帰りやがったのか ? 」
 
 蒼太は呟いたのを見て横を通った買い物に来たらしいおばさんがぎょっとする
 彼は普通に見ることが出来るから特に考えないが、普通の人間にジュリアは見えないのだ
 蒼太は口を手で押さえるとジュリアに目配せする。ジュリアはそれを見て黙って店の中に消えていく
 直ぐ彼女は何食わぬ顔で現れる。特に変化は感じられない。しかし、今ので普通の人間にもジュリアが見えるらしい
 ジュリアはベンチの空いてるスペースに腰かけると手帳を開いて話を再開させる
 
「えっと、何処まで話したっけ……あっ。で、質問についてですがあっち(天界)に帰ってはないかと。僅かですが、彼が残す気 ? みたいなのが残ってるので。どっかに隠れてるんじゃないですか ? 」
「それで ? このまま、待ってろっていうのか」
「いえいえ、やられたままじゃこっちも顔が立ちませんよ」

 ジュリアは蒼太を見て、ニヤリと笑った。思わずぞくりとする。その顔は、まるで、悪戯を思い付いた子供

「思い知らせてやります。何回も天空警察を弄んだこと、後悔させてやりますよ」

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「たっく、アイツ。俺は餌かよ」

 蒼太はぶつぶつ文句を言いながら近くの小石を蹴った
 ここは、学校から5分ほどの路地。最初の被害者藤堂七奈美の失踪場所だ。今、午後六時頃は西日が照らしとても明るいが人通りは少ない
 そこで蒼太は、只何もすること無く路地を行ったり来たりしていた
 
「ウォークマンでも持ってくんだったな」