複雑・ファジー小説
- Re: 蒼穹のゼロ〜天空警察捜査第一課事件記録〜 ( No.12 )
- 日時: 2015/07/11 22:37
- 名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)
*
それは、ショッピングモールでの事。ジュリアは天使らしからぬ悪魔みたいな表情で笑っていた
蒼太はその表情に大きく仰け反る
『お前……その、何だ。一回悪魔として転生してきたほうが……』
『余計な御世話ですよ。ジュリは今とっても凄い作戦を』
『今日の晩飯何かなー』
『無視ですかっ ! ? 』
ジュリアはベンチに飛び乗ると引きちぎらんばかりの勢いで彼の耳を引っ張る
『痛い痛い痛い痛い ! ! ! 聞くから ! 』
『本当ですか……』
涙眼+上目使いという最強コンボ技で見つめられた蒼太は赤面して頷く
ジュリアはそれを確認して、小さい胸で精一杯胸を張った
『どうせ、シヴァの事だから欲求不満に違いないのですっ。というわけで……』
ジュリアは先生のように蒼太の肩をポンポンと叩く
『蒼太さん、囮御願いしますね ? 』
一瞬何を言われたか分からない蒼太は一回瞬き。刹那、渾身の力を込めて叫ぶ
『ふざけんなぁあああぁあああああ ! ! ! 囮ならお前やれよ ! ! ! 』
『いやいや、ジュリは天使ですから。喰人鬼、人しか食べませんし』
『喰われたらどーしてくれんだよ ! ? 』
『あっ、そっちの方は大丈夫です。葬式費用ぐらいは出せますから』
『お金持ちだな、天空警察 ! ? って、いやいやいやその前に生きてる間に救う方法考えろぉおおおおおおおお ! ! ! 』
*
歩き疲れた蒼太は路地の壁に寄り掛かって夕日を只見つめていた
「何だかんだ言って引き受けてんだよなぁ、俺」
ジュリアは「隠れてますからー」とか何とか言って何処かに消えていた。恐らく、路地の入り口辺りに隠れているのだろう
思えばこうやって捜査とかなんとか言ってるけど彼女と会ったのはつい昨日の夜なのだ。あってまだ一日も経っていない
あっという間過ぎて、深く考えなかったが今自分は摩可不思議すぎる出来事に巻き込まれているわけで
「何か、俺。あれ、当たり前に受け入れすぎだろ」
希空が連れ去られた事とかも受け入れるのが速い原因として上げられるだろうが、流石に速すぎじゃないか
最終的に自分はキチガイとかいう訳分からない結論に達したときだった
「あれ ? 蒼太、何してんのー ? 」
直ぐ近くから、聞き覚えのある声がした。今まで必死こいて捜査してきた事件の被害者で蒼太の幼馴染み
顔を上げると案の定そこには蒼太の幼馴染み_____御崎希空_____が立っていた
希空は何時もと変わらない表情でこちらに近づいてくる
「希空、お前、何で ? 助かったのか ? スゲーな、おい」
「え、事件 ? 何の事」
「はっ、だって」
蒼太はそこで言葉を止め息を飲む
こちらを見上げてくる希空の眼は死んでいた
- Re: 蒼穹のゼロ〜天空警察捜査第一課事件記録〜 ( No.13 )
- 日時: 2015/06/22 21:57
- 名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)
希空は何時もと同じ声で口調で態度でこちらを見上げてくる
しかし、蒼太は何故か身震いしてしまう。見上げる眼が死んでいるからだろうか。感動の再会に泣きそうなのか。それとも__________
希空は額から汗を流す蒼太を見上げて首を傾げる
「ねえ、蒼太。事件って何 ? えっと、たしか近所の高橋さん家に空き巣が入ったってやつ ? 」
「あっ、いや、その、違くて」
「ふーん、まあいいや。じゃあ、ここにいるのもなんだし帰ろうよ。んでー、帰りはアイス買ってこー、蒼太の奢りで」
「はあ ? 何だよ、それ。割勘だろ、割勘」
蒼太は軽やかな足取りで希空に苦笑いして頭をかきながらついていく。頭では手持ちの残高の確認をする
ふと、脳内ではジュリアの顔が過った。が、
(まあ、後でまた来ればいいだけだよな。希空がまた狙われたら困るし)
何処か、軽率な考えばかりが頭を巡る。元々、ジュリアとは会って一日。他人事なのかもしれない
割りきって、再び帰路につく。前では歩きながら何食べようか指で候補を考えている希空がいる
次には、蒼太は希空の腕をつかんだ
「希空。お前、指の数える折方、変わってるよな」
「え ? 」
「今のお前の折方は一は人差し指一本。でも、何時もの希空はな親指一本なんだよ」
「いや、そ、それは……その……」
何時もの希空はバトミントン部に所属しているためか数える指の折方もバトミントンの得点の折方になる。それが彼女の癖だった
希空は尚も狼狽えている。完璧に怪しみ、腕を離し少し距離をとった
少しすると彼女は俯いて肩を震わし始めた。腰を低くし脱出体制をとる
しかし、刹那彼はぷつりと糸が切れたように膝から崩れ落ちてしまった。希空は彼の腹を踏みつける。顔には笑顔が張り付いていた
「希空…… ? 」
眼を丸くし苦しそうに息をする蒼太を見下し希空は、否、希空の姿をした何かはにへらと笑った
「ぶっ。バカだよな。お前も黙って俺について来れば痛い目に遭わずに死んだのに。なあ ? 痛いのはやだろ ? 人間 ? 」