複雑・ファジー小説

Re: 蒼穹のゼロ〜天空警察捜査第一課事件記録〜 ( No.13 )
日時: 2015/06/22 21:57
名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)

 希空は何時もと同じ声で口調で態度でこちらを見上げてくる
 しかし、蒼太は何故か身震いしてしまう。見上げる眼が死んでいるからだろうか。感動の再会に泣きそうなのか。それとも__________
 希空は額から汗を流す蒼太を見上げて首を傾げる
 
「ねえ、蒼太。事件って何 ? えっと、たしか近所の高橋さん家に空き巣が入ったってやつ ? 」
「あっ、いや、その、違くて」
「ふーん、まあいいや。じゃあ、ここにいるのもなんだし帰ろうよ。んでー、帰りはアイス買ってこー、蒼太の奢りで」
「はあ ? 何だよ、それ。割勘だろ、割勘」
 
 蒼太は軽やかな足取りで希空に苦笑いして頭をかきながらついていく。頭では手持ちの残高の確認をする
 ふと、脳内ではジュリアの顔が過った。が、
 
(まあ、後でまた来ればいいだけだよな。希空がまた狙われたら困るし)
 
 何処か、軽率な考えばかりが頭を巡る。元々、ジュリアとは会って一日。他人事なのかもしれない
 割りきって、再び帰路につく。前では歩きながら何食べようか指で候補を考えている希空がいる
 次には、蒼太は希空の腕をつかんだ
 
「希空。お前、指の数える折方、変わってるよな」
「え ? 」
「今のお前の折方は一は人差し指一本。でも、何時もの希空はな親指一本なんだよ」
「いや、そ、それは……その……」
 
 何時もの希空はバトミントン部に所属しているためか数える指の折方もバトミントンの得点の折方になる。それが彼女の癖だった
 希空は尚も狼狽えている。完璧に怪しみ、腕を離し少し距離をとった
 少しすると彼女は俯いて肩を震わし始めた。腰を低くし脱出体制をとる
 しかし、刹那彼はぷつりと糸が切れたように膝から崩れ落ちてしまった。希空は彼の腹を踏みつける。顔には笑顔が張り付いていた
 
「希空…… ? 」
 
 眼を丸くし苦しそうに息をする蒼太を見下し希空は、否、希空の姿をした何かはにへらと笑った
 
「ぶっ。バカだよな。お前も黙って俺について来れば痛い目に遭わずに死んだのに。なあ ? 痛いのはやだろ ? 人間 ? 」