複雑・ファジー小説

Re: 蒼穹のゼロ〜天空警察捜査第一課事件記録〜 ( No.16 )
日時: 2015/06/26 21:59
名前: みすず ◆5k4Bd86fvo (ID: 5PvEL/lW)

>>13

 「お前……誰だ ? 」
 
 苦しげに呻きながら聞く蒼太に希空の形をした何かはにやにやと笑う。希空の形にした何かは希空と同じ声で言う
 
「ん ? 誰って、お前はもう俺の事を知っているだろう ? 」
 
 希空と違う口調で言う。希空と同じ声で違う口調で言う
 彼女の形をした何かはにやりと笑うと蒼太の腹を踏みつけたまま彼の顔に自分の顔を近づける
 ごくりと息を飲む。その音も聞こえたかのようにまた笑う
 
「で ? なーんで、お前は天警の天使なんかと一緒にいんのかねー」
「な、何の事だよ」
「しらばっくれんなよ、人間。天警の天使から俺の事は聞いてるだろう ? 俺が」
  
 そこで彼女の、否、彼は蒼太に牙を見せて不気味に笑った
 
「鬼だっていうことを」
 
 口で生成した唾を飲み込む、ごくりと喉が上下に動く
 ショッピングモールでジュリアから喰人鬼シヴァの能力は聞いている。彼の能力は幻術ともう一つ
 それと、凶悪な犯罪者と聞いていたが笑い方といい、どこか悪戯っぽい性格な気がする
 そこで、希空の姿を幻術で作り出しているであろうシヴァは蒼太の頬をつついた
 
「んで、問題の天使は何処だ」
「さあ ? そーいうの、分かんだろ」
「んー、何か気配がここ一帯に散漫して上手く察知できねーんだよな」
「お気の毒様」

 蒼太の言い種に一回ムッとした顔をしたがそこでまた顔を近づけてくる
 
「だから、教えろ」
「やだと言ったら ? 」
「こーする」
 
 シヴァはにやりと笑うと手を蒼太の体にめり込ませた。刹那、呼吸が苦しくなる。心臓をぎゅっと掴まれたのだ
 さらに、追い討ちを掛けるように全身に痛みが走る。全身の細胞が麻痺していく感覚
 余りの痛みに叫ぶ
 死ぬ。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
 痛みはそれでも収まらなくて、彼は只叫ぶ叫ぶ叫ぶ
 でも、心の底から叫び散らしている筈なのに声が全く出ていない
 シヴァは蒼太の血で汚れた顔で牙を見せて笑った
 
「さあ、人間、答えるか、心肺停止と毒で死ぬか。選べ」
 
 その声も聞こえなくなるぐらいに蒼太は叫ぶ叫ぶ叫ぶ
 状況を楽しむようにシヴァは笑った