複雑・ファジー小説
- Re: イノチノツバサ 【オリキャラ募集中】 ( No.12 )
- 日時: 2015/08/30 22:02
- 名前: えみりあ (ID: TeOl6ZPi)
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「なんだ、ついてきたのか、優等生」
「あぁ。悪いかよ!」
柊と翼沙は並走し、廃墟の中を風のように抜けてゆく。周りの景色は流れるように、二人の後ろへと消えていった。
「見えてきたな」
不意に翼沙が呟いた。柊も顔を上げると、そこには感染獣たちの姿があった。
「じゃあ、後でな優等生!」
そう言い残すと翼沙は、今以上に強くアクセルを踏み、感染獣たちに突っ込んでいった。
「〈モード・サイズ〉———起動っ」
翼沙は、光器を縦に長くのばし、起動した。するとプラズマ刃は、鎌のような形をとる。
「さぁて……燃えてきたぁぁぁぁっ!!」
高スピードを保ったまま、翼沙は光器を大きく振るった。不意を突かれた感染獣たちは、どす黒い血を噴き出して一刀両断されてゆく……
「よっと」
翼沙は不意に姿勢を低くした。柊は怪訝に思ったが、次の瞬間……
「————————ッ!!」
彼女の背中を飛び越えて、感染獣が現れた。どうやら先ほどの彼女の動きは、この攻撃をよけるためのようだった。
「起動っ」
柊は慌てず、光器の電源を入れた。まだプラズマが出きっていない状態で、光器をふるう。しかし、敵に当たる頃には完全に起動されていて、一撃でその首をはねた。
「へぇ……やるじゃん」
翼沙は一瞬こちらを向き、ニヤリと笑った。
「お前もな」
柊も気分が上がったのか、アクセルを踏んだ。そしてもう一度翼沙に並び、敵と戦いながら並走する。
しばらくそのまま進むと……
「おい、霧崎。あれ……」
「あぁん?ちっ、燃えてきたところに、なんだよ……」
二人が目にしたのは、路上に倒れている兵士。感染獣に襲われた後らしく、虫の息だった。
「大丈夫ですか?」
柊はガストボードをとめ、負傷兵に駆け寄る。翼沙も、舌打ちをしながらついてきた。
柊は兵士の手を取った。力が入っておらず、感覚がなくなっているようだ。心なしか、少し冷たくなっている。
「……お……俺は……もう…………」
諦めた顔で、兵士は言う。柊も励ましてやりたいが、この怪我では治りようがないだろうと悟った。何も言わずに、ただその兵士の目を見つめる。
「……先に、な……仲間が……いるん……です……頼……みます……」
彼はそう言い残し、目を閉じた。柊は驚きながら脈を取るが、当然鼓動は感じられない。
「おい。さっさと次行こうぜ」
翼沙は、その死に無関心そうに言った。しかし柊は、かぶりを振る。
「霧崎、その仲間を保護したら帰還しよう」
「だぁぁ?何言ってんだよ!!」
「いいからっ!」
柊の威圧的な表情に屈したのか、翼沙は小さく悪態をつき
「分かったよ」
としぶしぶ承諾した。柊は兵士の腕を折り曲げ、腹の上に乗せる。胸元の、白い虎のエンブレムが目にとまった。口を大きく開き、勇ましそうではあるが、柊の眼にはそれが悲しみを帯びているように見えた。
踵を返し、柊はガストボードに乗り直した。そして、静かにその場を後にした。