複雑・ファジー小説
- Re: イノチノツバサ 【オリキャラ募集中】 ( No.13 )
- 日時: 2015/09/01 21:27
- 名前: えみりあ (ID: TeOl6ZPi)
廃墟を進みながら、柊は考えた。
———何だろう……この気持ち。
少し前では、翼沙が次々と感染獣を切り倒している。時折奇声を発しては、愉快そうに。
———悲しいんでも、腹立たしいんでもない……
柊の脳裏に、もう一度先ほどの兵士の顔が浮かぶ。
———ただ……悔しい……
先ほどの救助作業でもそうだった。助け出される命もあれば、見捨ててしまった命もあった。思い通りに事を進められない。ただ、それが悔しい。
「ん?……さっきのって、あいつか?」
前方を行く翼沙が呟いた。彼女が指さすその先には、感染獣に囲まれ、うろたえている白虎団の兵士の姿があった。
「加勢します!」
「おらぁ、退いた退いたぁ!!」
柊と翼沙は、群がる感染獣たちに向かって突撃した。柊はガストボードから飛び降り、光器を振り回しながら着地した。慣性の法則ですぐには止まれないボードが、前方の感染獣をなぎ倒す。と同時に、柊は周りにいた2体の感染獣の首を切り落とした。
その間に、翼沙の方も、感染獣たちの攻撃をかわしては光器をふるい、4体ほどを仕留めていた。気がつくと、兵士の付近にいた感染獣たちは殲滅されていた。
「大丈夫でしたか?」
「は……はい!ありがとうございました」
先ほどの兵士は、ペコペコと頭を下げながら礼を述べる。眼鏡をかけていて、見た目通り気の弱そうな奴だ。
柊はその兵士を注意深く見まわした。けがはないようだ。
「よかった……あなたの仲間は?」
柊は兵士に問いかける。すると兵士は俯き、悲しそうな顔をした。
「……おそらく、私しか残っていないでしょう……」
自分だけ生き残ったことに、罪悪感でも感じているようだ。見ていられなくなり、柊は切り出す。
「そうですか……では、あなただけでも帰還しましょう。行くぞ、霧崎」
「ちっ。分かったよ」
柊はもう一度ガストボードに乗り直す。そして、他の二人と共に、引き返し始めた。
柊は、先ほどよりも心が軽くなったような気がした。たったひとりでもいい。救うことができたのだから。