複雑・ファジー小説
- Re: イノチノツバサ 【オリキャラ募集中】 ( No.20 )
- 日時: 2015/09/16 22:35
- 名前: えみりあ (ID: TeOl6ZPi)
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しばらくの走行ののち、ようやく九条班はバリケードにたどり着いた。そこには、他の場所とは違い、大きくて頑丈なゲートが設置されていた。
「ここをくぐると、外はもう人間の領域ではない。……気を引き締めていくぞ」
そう言って九条は、ゲート脇の装置を起動した。そこには、数字の並んだキーボード取り付けられている。九条が班員たちに見えないように素早く数字を打ち込むと、緑のランプがつき、ゲートが開いた。
班員たちは、緊張した面持ちで、次々とゲートをくぐる。風景こそ中と変わらないが、たちこめる空気は、やはり一変していた。
「レーダーにも、感染獣や感染者は写っていない。今の内に、目的のポイントまで移動しよう」
颯天は、ストレッチャーを操縦していた拓馬のそばに立ち、レーダーを覗き込みながら告げた。そのまま拓馬に指示を出し、自身のストレッチャーを前進させた。他の班員を誘導させるためのようだ。
「遅れないように、俺の後に続いてくれ」
颯天が指示を出すと、ストレッチャーたちは隊列を組んで、再び前進し始めた。
ゲートをくぐってから少したったころだろう。
「—————————ッ!!」
班員たちはその声を聞きつけるなり、表情をこわばらせた。
「近いな……」
九条はさっとガストボードに乗り、光器を取りだす。他の上位ランカーたちもそれに続こうとした時だった。
「————————ッ!!」
その感染獣は、九条たちの前に躍り出てきた。九条は迷わず敵に立ち向かう。
柊もそれに続き、ガストボードのアクセルを踏もうとする。しかし……
「待った」
すかさず颯天の制止が入った。
「何で止めるんだよ!!」
「今回の任務は、あくまでサンプルの生け捕りだ。いきなり言われても、君には殺すことしかできないだろう?」
颯天に言われ、柊は返す言葉もなく黙りこむ。確かにそうだ。感染獣を殺すのは簡単だが、生け捕りにする方法は教わっていない。
「まずは先輩のやり方を見ていろ。君らにやってもらうのはそれからだ」
颯天の言葉通り、班員たちは、黙って九条の背中を見つめた。
「……〈モード・オオタチ〉……起動!」
九条は静かな声で唱えながら、光器を起動する。すると光器は、片側だけに刃の付いた、ちょうど日本刀のように、鍔と刃のある作りになった。
九条が光器を起動する間に、感染獣が飛びかかってきた。九条は慌てることなく、敵をギリギリまで引き付けた。そして相手が自分の間会いに入った瞬間……
「フッ!」
居合抜きのように、目にもとまらぬ速さで光器を振りかぶった。しかし、刃の方で切りつけはせず、峰で敵の腹元をたたく。敵が体勢を崩しているすきに、もう一度光器をふるい、今度は敵の頭部に直接打撃を与えた。すると感染獣の動きが止まり、そのままその場に倒れ込んだ。
「……こんな風に、光器でけがを負わせつつ、主に打撃や薬品で相手を気絶させるんだ。感染獣が動かなくなったら、この特殊合成繊維の縄で縛りあげる。できるかい?」
颯天はストレッチャーに積んでいた縄を持って、九条のもとに駆け寄った。そして、感染獣の手足と口を縛りあげ、身動きが出来ないようにストレッチャーに乗せた。
「……とはいうものの、実際にやってみないと分からないよな?じゃあ、みんなも同じようにサンプルを捕獲してくれ。あくまで安全が最優先だぞ?危ないと思ったら、絶対に無理はしないでくれよな?」
颯天が言うと、班員たちはガストボードに乗り、少人数のグループに分かれて辺りの散策をし始める。
「あんまり離れるなよ〜!」
颯天の言葉は、まるで遠足の引率できた、小学校の教員のように思われた。