複雑・ファジー小説

Re: イノチノツバサ 【参照1000突破 感謝!】 ( No.32 )
日時: 2015/12/23 20:24
名前: えみりあ (ID: TeOl6ZPi)




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「次、お待ちの方、どうぞ」

 四兵団本部 機構・受付窓口

 機構———主に、四兵団の使用する武器の生産やメンテナンスを行う機関。ここはその、修理依頼の窓口であった。今日も多くの四兵団員が並び、機構の職員たちは彼らとのやり取りに明け暮れる。

「トリガーパーツの破損ですね。こちらの依頼書に必要事項をご記入ください」

 その中に、新人と思しき、若い青年の姿があった。まだ仕事に慣れていないのか、彼のレーンは他のレーンに比べると、尾を長く引いていた。

 栗色の柔らかそうな髪に、濃紺の澄んだ瞳、疲れを表に出すまいと表情を固めた顔。彼は、小さな額には軽く汗を浮かべながら、依頼者から渡された光器を調べる。カチャカチャと操作してみて、破損具合を見た。

 客が用紙に記入し終わったのを確認すると、彼は足元から代用の光器を取り出し、机の上に並べる。

「ありがとうございます。こちら、所要日数は4日と見積もらせていただきます。それまでは、この代用光器をお使いください」

 客は光器を受け取ると、軽く会釈をして下がっていった。すると、息つく暇もなく、すぐに次の客が現れる。

「雨宿、その客が終わったら、交代だ。休憩して来い」

「ひゃっ、はい!」

 唐突に後ろから声をかけられ、青年・雨宿 頼弥(あまやど らいや)は、奇声を上げた。周りから、くすくすという嘲笑が聞こえる。肩をすくめながら、最後の客の依頼を承った。

 その客が帰っていくと、押しのけるように、先ほど声をかけた先輩がカウンターに入ってきた。軽く会釈をしながら、頼弥は奥の部屋へと戻っていく。

 頼弥はさっそく給湯室に向かい、コーヒーを淹れた。出来上がると、熱いコーヒーカップを大切そうに抱え、席に着く。2時間近く近くしゃべり続けたため、のどがカラカラだ。ミルクたっぷりのコーヒーを、疲れ切った表情で飲む。

「久しぶり。大変そうだな?」

「うわ!!」

 またも後ろから声をかけられたので、頼弥は危うくコーヒーをこぼしてしまうところだった。

「なんだ、君ですか、柊」