複雑・ファジー小説
- Re: イノチノツバサ 【オリキャラ募集中】 ( No.9 )
- 日時: 2015/08/28 23:32
- 名前: えみりあ (ID: TeOl6ZPi)
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「班長、息のある負傷者はすべてストレッチャーに乗せました……」
九条に報告してきたのは、拓馬だった。九条の指示通りに働いたものの、救えなかった命を前に、すっかりしょげている様子だった。九条はそんな彼の肩を、優しくたたく。
「そうか……ストレッチャーには、班員は全員乗れそうか?」
「いえ、7・8名ほどあぶれそうです」
拓馬と九条は仲間たちの方を振り返り、さっと数を確認する。
「仕方がない。入団ランクの上位者は、ガストボードで帰還だ」
九条は班員たちに向かって次の指示を出した。班員たちは、うなだれながらもそれに従う。
班員たちは、次々とストレッチャーに乗り込む。その間に九条に指名された数名は、ストレッチャーのトランクから、金属板のような乗り物を取りだした。
ガストボード———個人用、戦闘時専用の輸送機械だ。スケートボードのような形状で、空中に浮き上がり、高速で移動することができる。かかとの部分にはボタンが付いていて、これで加速減速を行うことができる。
柊や拓馬、遙や翼沙を含む数名はこれに乗り、莉亜たち残りの班員はストレッチャー乗せられた。
出立の用意が整うと、九条は手で合図を出した。同時に、ストレッチャーは次々に進みだす。
莉亜が自分のストレッチャーを動かすと、後ろからうめき声が聞こえた。車体が揺れ、負傷者が苦痛を感じたらしい。
———そぉっと動かさなきゃ……
一つ学んだように、莉亜は運転に気を張った。
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帰還開始から数分後、それは起こった。
「まずい……」
九条は、腕に取り付けられた機械を見ながら呟いた。通信用機器のようだ。しばらく操作を行った後、九条は大声で班員たちに指示を出す。
「このルートの先で、白虎団が陽動作戦を行っている。迂回するぞ」
九条は身体を大きく旋回させた。それに続くように、班員たちも旋回する。
……一人を除いて。
「いよっしゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
翼沙だった。
「霧崎……!」
九条は叫んだが、時すでに遅し。翼沙はアクセルを踏み。猛スピードで直進していた。
「くそ……っ!影崎、ビーコンを預ける。お前が先導しろ……」
九条が先ほどの機械を柊に渡そうとした時……
「いえ……俺が援護に回ります!」
逃げるように、柊もアクセルを踏んだ。あっという間に柊と翼沙の姿は見えなくなる。
「あいつら……っ!!」
九条はその方向を睨みつけた。
「覚えておけよ……反省文一割増しで書かせてやる……っ」