複雑・ファジー小説
- Re: 神竜は白銀と浪に踊る。【キャラ募集中!】 ( No.15 )
- 日時: 2015/07/20 23:17
- 名前: 睡魔 (ID: EEo9oavq)
「なぁ、あれ何かわかるか?」
今まで見てて飽きるほど全く同じ景色だった果てしない砂漠に、突然、岩で頑丈に固められた壁のようなものが先に見えた。
「ツーチよ、私には何を言っているのかわからん」
しかし、ミレーヌには見えないらしい。
「はぁ? お前、目大丈夫かよ」
俺が遂に同じ景色にうんざりして、幻覚が見えてしまった、なんてことは無いはずだ。
確かに、はっきりと、進む先には違う景色が広がっている。
間違っているのは俺ではなくミレーヌの方だ。
“ミレーヌにはそんなもの見レーヌ"、とは言わせない。
………。
……………。
…………………。
ごめん、無かったことにして。
「私の目がドラゴン並みに機能するとでも思っているのか、お前は」
ぶっきらぼうな口調で言われた。
あ、そういう事ですか。
「失礼致しました」
ドラゴンの目と人間の目に圧倒的差があることを忘れていた。
とはいえ、俺にはくっきり見えるのにミレーヌには全く見えないとは…………ここまで差があったとは驚きだ。
*
「やっと私にも見えたぞ。あれは恐らくゴーレムの集落だな…………壁は集落を囲っているものだ」
しばらくして壁に近付くと、ミレーヌにもようやく見えたらしい。
「ゴーレム、か」
壁の向こう側を見れば、確かに、ゴーレムと呼ばれても納得できるような、ガタイがいい巨人がちらほらと見えた。
無論、巨人といっても精々二、三メートル程でドラゴンの俺に比べれば屁でもないが、やはり前世の男の子の性が残っているせいか、そのロボットのような頑丈さと力強さを思わせる大きな体が、俺の目にはかっこ良く映ってしまう。
「私も初めて見たが、あの頼もしそうな大きな背中には、つい見惚れてしまうな」
好戦的なミレーヌも、やはり同じように感じるらしい。
「ゴーレム達ならドラゴンの巣に適した場所を知ってるんじゃないか?」
砂漠で集落を築ける程なのだから、知っててもおかしくないはずだ。
「何とも言えんな。存在自体珍しいうえ、まず話が通じるかもわからん」
「そんなに珍しいものなのか」
ともかく、聞かないわけにもいかないだろう。
集落の壁には門のような出入口があったが、無論俺が入れるサイズでは無いので、壁の上に両手を掛け、頭をもたげた。
“進撃の巨竜"じゃー。
「ドラゴンが巣を作るのに合った場所ってありませんかね?」
何事か、とゴーレム達は俺を見て騒ぎ始める。
普段は翼も無く足も無い俺はドラゴンだと気付かれにくいが、今は壁の上から頭を付き出しているだけ。完璧にドラゴンだと思っているはずだ。
ヒソヒソと何やら話し終えると、この集落の長であろう、他よりも一回り大きい四メートル程のゴーレムが前に出た。
「ワタシタチハ、ドラゴント、カカワルツモリハナイ」
ロボットのような辿々しい言葉だが、話は通じているらしい。
常識として本来のドラゴンの恐ろしさを知らないのか、元々ゴーレムがそういう質なのか知らないが、長も他のゴーレムも、俺を見ても全く怯える様子が無い。
しかし、よそ者とは関わりたくないようだ。
「お前達、わかっているのか? 這竜ツーチはどんなものでも、この鋭い牙と爪で、一瞬にして八つ裂きにできる最強のドラゴンであるのだぞ。その偉大なるドラゴンに逆らうとは、何故か」
向こうが関わりたくないのだから、おとなしく別を探した方がいいだろうと思ったのだが、急にミレーヌが俺の頭の上で熱弁を振るった。
ゴーレム達はどうしようか、と困った様子で再び額を合わせる。
しばらくすると、また長が前に出た。
「ドラゴンガ、スヲツクレルヨウナ、バショヘハ、アンナイスル。ダガ、ソレイジョウ、カカワラナイ」
渋々場所だけは案内してくれるらしい。